〈ダンスでいこう!!特待生レポート④〉宮悠介 from 関東【参加プログラム/舞台制作者を知るオンライントーク】

2025.3.24

「ダンスでいこう!!」2024の特待生、関東を拠点に活動する宮悠介さんのレポートをお届けします。ぜひご覧ください。

👉参加プログラム【ダンスでいこう!!2024】
舞台制作者を知るオンライントーク『私がこの仕事を選んだ理由 vol.3』
アーカイヴ視聴可(購入期限:3/25) 💻🌟視聴は2025年3月31日まで。
大学院生以下無料。アーティスト割引あり。
■スピーカー:
吉田雄一郎[城崎国際アートセンター プログラムディレクター / 一般社団法人POST 代表理事]
今川和佳子[合同会社imajimu代表 / アートコーディネーター]
森下響子[北九州芸術劇場 劇場事業課 舞台事業・広報係、企画制作担当]
豊山佳美[KYOTO EXPERIMENT広報 / 舞台芸術制作者]
小川恵祐[沖縄アーツカウンシル プログラムオフィサー / 舞台芸術制作者]
岩中可南子[アートマネージャー / 編集者]
プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/d24_onlinetalk
予約・購入▶️https://pptalk3.peatix.com/


1. はじめに
 本レポートでは、私が受講し、感じたことを整理する。このトークシリーズでは、異なる経歴や視点を持つ舞台制作者たちが登壇し、それぞれのキャリア形成や仕事の特徴、社会との関わりについて語った。私は普段アーティスト活動をする中で感じた「制作」業務への疑問や悩みに対するヒントを得るべく、参加を決意した。

2. トークの概要と受講しての所感
 トークは全6回にわたりオンラインで開催された。各回毎に招かれたゲストの話を企画・運営者の宮久保真紀さん、神前沙織さん(JCDN)が聞き手として深堀り、その様子を受講者が視聴する形式だ。タイトルにもあるように、ゲストが舞台制作という『仕事を選んだ理由』に触れるべく、これまでのキャリアや現在の活動についてスライドを用いて説明した。各回の終盤には、受講者による質疑応答の時間も設けられた。
 本シリーズを通じて改めて認識したのは、舞台制作者の役割が単なる裏方ではなく、アートをつくる創造的なプロセスの一翼を担う重要な存在であるということだ。登壇者の話から、舞台制作者はアーティストのサポートだけでなく、地域振興や文化政策、教育活動、広報戦略の立案など、多岐にわたる分野に関与していることが浮かび上がった。特に、地域の文化資源を活用したアートプロジェクトや、市民参加型の取り組みを通じて、舞台芸術が社会に与える影響について深く考えさせられた。ときに新たな価値を生み出す仕事でもあり、活動そのものがアートであると強く感じた。
 また、登壇者のキャリアパスは一つの決まったルートがあるわけではなく、それぞれが経験を積みながら柔軟に仕事の幅を広げていた点も興味深かった。
 特筆すべきは、全6回のトーク終了後に開催された「zoomオフ会」だ。それまでのトークは受講者が話を聞く一方向のスタイルだったが、zoomオフ会ではゲストと受講者がカジュアルに交流できる場が設けられた。トークで語りきれなかった細かな内容や受講者が日頃抱く疑問について自由に議論できる時間となっていた。ここでとにかく強調したいことがある。今の日本の舞台芸術を現場で支え動かしている方々が一堂に会し、しかも自分の悩みを聞いて答えてくれる機会はそうそうない!日本全国各地でご活動されているお忙しい制作者の方々であり、皆さんと自然とお知り合いになる(例えばたまたまお仕事でご一緒するとか)には相当の運と時間とコストが必要だ。そういう意味で、登壇者同士のネットワーキングの場としても機能していたのではないかと想像しつつ、受講者にとって非常にリッチな機会であったのは間違いないであろう。

3. 振付家(だけでなく全ての表現者)必修!
 私は普段、振付家として舞台作品の創作・発表を行っている。しかし、あるプロジェクトの中で、純粋に「作品を上演するだけ」であることはほとんど無い。例えば、以下のような業務が発生する。
•プロジェクトの企画
•助成金の申請
•キャストやスタッフの選定、依頼
•契約書の作成、説明・契約
•出演者のスケジュール調整
•会場や稽古場の手配
•チケット予約システムの構築、運営
•広報・宣伝のターゲット決め、ビジュアル作成
•作品の創作(本当はここに注力したい泣)
•権利許諾の調査、手続き
•搬入、搬出、舞台づくり
•当日運営(受付や客席誘導等)
•精算処理、助成金の報告
 
これらは舞台にまつわる業務のほんの一部だ。しかし、特に活動を始めて間もないアーティストにとって、これらを自分自身でこなさなければならない場面は多い。どのようにして行えばよいのだろうか。また、制作者の方と協働させていただく際、どの業務をお任せするのが適切なのだろうか。というか、そもそも「制作」という言葉は具体的にどこまでの範囲を指すのだろうか。
 自身で遂行していくにしろ、制作者の方と協働するにしろ、このケースバイケースで取り扱われる「制作」を理解しプロジェクトを円滑に進行していくためには、プロの制作者の方の仕事とそのキャリアを複数事例参照する必要があるだろう。
 回りくどくなってしまったが、受講をしてみて強く感じたのは、このシリーズが制作者を目指す人だけでなく、全ての表現者にとって必見の内容であるということだ。備えるべきリテラシーと言ってもいい。プロジェクトが円滑に進むか否かは作品の質に直結する。作品を取り巻く全ての人が身心ともに健康的かつ持続可能な形で活躍するためにも必修である。

 来年度の開催は一度お休みとのことだ。だからこそ2025/03/31まで公開されているアーカイブ動画の視聴を強くお勧めしたい。と同時に、本シリーズ続編の開催を私は強く望んでいる。

レポート:宮悠介(みや・ゆうすけ)


👉「ダンスでいこう特待生」制度:
これまでにJCDNのコンテンポラリーダンス新進振付家育成事業に参加したことのある振付家が「ダンスでいこう!!」特待生対応プログラムにおいて、受講料の免除、移動費の補助等によるサポートを受けられる制度(サポート内容はプログラムにより異なる)。
2024年度の応募要綱▶️ choreographers.jcdn.org/opencall/d24_tokutai_yoko

👉宮悠介 その他の参加プログラム:
KYOTO CHOREOGRAPHY AWARD 2024
宮悠介振付「かたちたち」上演(京都賞・オーディエンス賞を受賞)
プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/kca24

ダンスでいこう!!2023 山代温泉『空間感覚で広がる演出・振付の世界』講座「VISION」滞在制作・公演「VISION+」
宮悠介振付「かたち」上演
プログラム詳細▶️https://choreographers.jcdn.org/2023/program/dance-it-is_yamashiro.html