Report/Survey
振付家・ダンサー
作家としての創作の在り方を問い直し、作家性を刷新する、進展させる機会となりました。
私は自身で本プログラムに応募しておきながら「コレオグラフィーアワード」という言葉に負い目を感じていました。そもそも「振付」という言葉そのものにコンプレックスを抱いています。私はパフォーミングアーツとして、肉体がその瞬間その場で起こす現象に興味があります。ですので、誤解を恐れずに言えば、正直かたち(表出した結果)なんてどうでもいい、その人のかたちないエネルギー(表出する手前にあるもの)そのものがそこに突っ立っていて、それが何処に行くのかを見守っていたい。今回上演した『かたちたち』の前身となる『かたち』はまさにそのようなことを目指した作品でした。しかし『かたち』の上演を重ねる中で、「あなたのやっていることは振付じゃない」とか、「後世に残らないから作品とは言えない」等、言葉をいただくことがありました。こういったお言葉が今回私に、作品という枠組みに対してどのように振舞うべきか、真正面から向き合い考える機会を与えてくれました。
現時点の私にとって、振付とは「緩やかな再現性が担保された中で、エネルギーが主体的に未来を裏切る可能性を用意すること」です。より良い方角にむかって、破るために約束事を交わす。繰り返すごとに、どこまでいっても踊りは生ものであることを知らしめられる作品作りを心掛けました。
しかし、これも発展の途上であり、私は今も「振付」というものが全く分からないままです。本アワード終演後に、ある審査員の方に「ウェルメイド(=上手く作られた劇)を目指さないで」とお言葉をいただきました。もしかしたら振付を探る中で無意識的に、これまでの先人たちが打ち立てた「振付」の幻影を追いかけているのかもしれません。新しい課題と共にもっともっと踊り探る原動力をいただきました。