〈ダンスでいこう!!特待生レポート③〉中根千枝 from 兵庫【参加プログラム/全国+北九州:短期集中ゼミ『振付を探る9日間の冒険』】

2024.12.27

「ダンスでいこう!!」2024の特待生、兵庫を拠点に活動する中根千枝さんのレポートをお届けします。ぜひご覧ください。

👉参加プログラム【ダンスでいこう!!2024】
全国+北九州:短期集中ゼミ『振付を探る9日間の冒険』について
オンライン連続講座:11月4・11・18・25日
対面ワークショップ:11月30日~12月8日
対面ワークショップ会場:J:COM北九州芸術劇場 創造工房・稽古場 
■講師:チョン・ヨンドゥ(Jung Youngdoo)/韓国
■ゲスト講師:スーザン・バージュ(Susan Buirge)/仏
プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/d24_kitakyusyu

 


 この度、短期集中ゼミ『振付を探る9日間の冒険』に参加させていただきました。
 今回のプログラムは、まずはオンライン講座から始まりました。ダンスの歴史を哲学や過去の世界情勢など多方面から捉え、具体的な作家や作品の映像からその時を感覚しながら知ることができました。既に知っていることも、改めて問いかけられると明確な応えには足りない、まだまだ探る余地があると、自身の思考と視点の持ち方に気が付きました。現在の創作物が脈々と過去から連なり、私たちの身体もその一つであること、新たな技術やアイデアがもたらす影響とその主体、個人と社会の関わりなどを意識して捉えることで、様々な創作物をより受け取りやすく、感じ、改めて深く考察するようになりました。
 自身の意識下や無意識下にあることを捉え直し、良い「問い」を立てることが対面ワークショップでもできたら、これから作りたいと思う作品の構想も少しずつ明確になるかもしれないと思いながら11月を過ごし、気付けばあっという間に北九州へ向かう日が来ていました。

紫川にかかる中の橋からの景色。左手にある建物が今回の会場となった北九州芸術劇場。この川を毎日往復した。

 対面ワークショップでは「動きを作り変化させ連ねる」ことに取り組みました。振付の最小単位である「動き」を作り、その動きを変化(バリエーション)させること、異なる要素を取り入れても一貫性のある連なりを成すことを条件に、参加メンバーそれぞれにクリエーションを行いました。モチーフとなる動き、後に連なる変化に対して強度のある最初の動き(起源が分かる、オリジナルの動き)をどの様に変化させるか。文や詩、音楽での喩えがわかりやすかった分、ダンスでは様々に“見えてしまう”ことや“見えにくい”といった双方向性を少し意識しつつ、まずは動きがよく見える(明確に、意図する様に見てとれる)ように、身体を動かしながら考え改変を重ねました。

 作ったものを見せ合って話をする毎に、小さな問いと応え、それぞれが課題とすることや挑戦、アイデアが共有されていきました。お互いの制作プロセスを知り尊重しながら見聞きすることは、自身の問いや課題とも重なり多くの発見がありました。見たものから次の展開へ繋がる考察や選択を、瞬発力よく投げかけることを意識して話す時間でもあり、この感覚はこれからも意識的に鈍らせず持ち続けなければ、と思います。そうして、次に見る時にはまた新たな結果と新たな課題が出て来る…きっと終わりがないことなんだよな、と、おそろしさと共に作るよろこびの様な感覚が日々湧き上がりました。ワークショップの間、何度も「これは実験です」と、取り組むことや挑戦に向かうことを後押ししてくださったヨンドゥさんと、共に動き続けた参加メンバーの存在が本当に心強かったです。

 作っている間に解ることはとても些細なことだけれど確かで、掴めたり見てもらえた時には次へ進む自信になりました。もっとこうしたいとか、こうだったらいいのにと欲望が勝る時も多々ありましたが、動きと身体に地道に向き合うと、身体が何とかしようとしたり、思いがけずできることや良い思いつきに遭遇したり。もっと必要なことに気付いたり出来ました。この身体と動きのやりとりをより多く、豊かにすることが、踊りや動きの質をもたらす方法の一つでもあり、振付を行う上でとても重要な作業だとも実感しました。

 そして改めて振り返ると、2日目にあったスーザン・バージュさんの公開トークにとても大きな影響を受けていたと思います。スーザンさんの人生がそのまま一つのダンスの歴史であり、それを目の前で話して聞かせてもらえたことが、ダンスはあらゆるものが発する分子の交換であるという話と繋がりました。スーザンさんのダンスの原点の話がとても美しく、今もそのエネルギーが燃え続けていることにも深く感動しました。あの場に居られてよかったです。

 プログラムが終わった翌日、このレポートに何を書くのだろうかと、呆然としながら新幹線に乗ったことを思い出しました。パソコンの画面越しだったヨンドゥさんや参加メンバーと会えて初日は何だか安心したこと、初めて訪れた北九州の町や行った場所、そこに居る人、あらゆることが刺激となり日を追う毎に支えとなってくれました。遠くまで頭も身体も旅をして、今もまだ受け取り切れないおみやげをたくさんもらった様な感覚です。今回の経験を糧に、これからの多くのやるべきこと、創作を、続けていこうと思います。

レポート:中根千枝(なかね・ちえ)

 

写真左:森鴎外旧居。鴎外のここでの日々は『小倉日記』としてまとめられ、表の通りは鴎外通りと名付けられている。
写真右:町へと流れ込む川から見る小倉城。川幅が狭く、川と橋の距離が近いからか潮のにおいがした。


👉「ダンスでいこう特待生」制度:
これまでにJCDNのコンテンポラリーダンス新進振付家育成事業に参加したことのある振付家が「ダンスでいこう!!」特待生対応プログラムにおいて、受講料の免除、移動費の補助等によるサポートを受けられる制度(サポート内容はプログラムにより異なる)。
2024年度の応募要綱▶️ choreographers.jcdn.org/opencall/d24_tokutai_yoko

👉中根千枝 過去の参加プログラム:
KYOTO CHOREOGRAPHY AWARD 2020
中根千枝・内田結花(大阪)「移動する暮らし」
プログラム詳細▶️ https://dance-it-is.com/program2020/kyoto2020/index.html