〈ダンスでいこう!!特待生レポート①〉鈴木明倫 from 札幌

2024.10.17

コンテンポラリーダンス新進振付家育成事業2024〈ダンスでいこう!!特待生レポート①〉

2024年より「ダンスでいこう!!」特待生制度を始めました。今年は計4名の方が各地のプログラムに参加します。
まずは一人目、札幌で活動する鈴木明倫さんのレポートをお届けします。
異なる分野の講師からの学びや気づき、そして山代温泉という場所を通して考える制作環境などについて触れられています。ぜひご覧ください。


👉参加プログラム【ダンスでいこう!!2024】山代温泉『空間感覚で広がる振付・演出の世界2024』

講座「VISION」(Aプログラム)8月27日(火)~29日(木)
■会場:山代温泉専光寺(石川県加賀市)
■講師:中島那奈子(ダンスドラマトゥルク)、東野祥子(振付家)、コミンズ・リオ(プロデューサー)、寺西望(ファシリテーター)、山田洋平(舞台芸術家)

プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/d24_yamashiro

 


今回「山代温泉:空間感覚で広がる振付・演出の世界2024」に参加させていただきたくさんの刺激と学びをいただきました。

とても三日間の出来事だったとは思えないほど濃厚な時間で体感的にはあっという間に終わってしまった感覚です。

初日はまだ受講生同士も緊張感のある中全国から集まった8人の参加者それぞれの作品プレゼンを兼ねた自己紹介から始まりました。プレゼンということもあり、プロジェクターや言葉を使った解説が多かったので自分は実際に踊りを披露してみようと思い、資料などは用意せずその場で作品の一部分を踊りました。
「アイデアには価値はなく、実際にどんな現象が起きるかが大事」と後に山田さんが講義の中で話していたのでその点においては僕のプレゼンの形は良かったとのことです。ただ、やはりデータにしてアーカイブを残すということはとても大切だと感じたのでパソコンが苦手な自分ですが資料づくりもこれからは積極的に取り入れていこうと他の受講生のプレゼンをみて学び、感じました。

山田さんの講義の中では「とにかくまずは現象を引き起こすことが大切だ」というお話が印象的でした。確かによくディスカッションが先行してしまい、アイデアはたくさん出るもののいざやってみるとなかなか思い通りの形にはならなくて苦戦した経験があります。「とにかくまずやってみる、まずは行動」創作においてはここが肝になってくるのだと思います。
また「建築物を移動する人はあらかじめ作者の意図によって振付されている」というお話もとても面白かったです。特別な状態で神様に会うために神社や教会は階段などであえて身体に負荷をかけて建物に入る構造になっていることや中庭を渡る石段はあえて風景を見て貰うためにゆっくり歩くつくりになっている、などまさにこれは「振付だ」と思いました。

 

寺西さんの講義では「コミュニケーション」というツールの大切さ繊細さなどを学びました。つい自分の視点が常識だと思い込んでしまいますが如何に相手の視点にもたってそこに想像力を働かせるかが重要だと思いました。あと対話においてついつい人は自分の話をしてしまいがちですが何よりまず相手の話を聞くことが大切なのだと学びました。

 

東野さんの講義ではとにかく汗だくになりみんなでインプロで踊ったことでここで何か一体感のようなものが生まれたな、と思いました。会話だけでないコミュニケーションのあり方がやはりダンスの面白いところだと感じました。東野さんの誘導はまるで魔法のようで自然と集中力が増し、いつも以上に身体を使うことが出来ました。

 

 

中島さんの講義ではダンスドラマトゥルグの在り方について考えさせられました。入りすぎず、離れすぎない、その絶妙なバランス感覚がドラマトゥルグには大切だと知り、振付家を育てる上では母親のような存在だなと感じました。振付家は孤独になることが多いのでそっと寄り添ってくれるドラマトゥルグのような存在がいるととても安心するのだと思います。

 

リオさんの経済の話は個人的に札幌でスタジオ経営をしているので振付家というより会社経営の視点で学びがたくさんありました。またプロジェクターを使ったプレゼンの仕方が凄く上手で時折受講生に投げかけるクイズなども飽きさせない構成になっておりプレゼンの仕方も勉強になりました。

 

これらの貴重な講義を二日間に渡り学び、迎えた三日目は午前中から午後にかけてはそれぞれの作品のクリエーションの時間となり各々が作品と向き合っていました。僕はプレゼンの内容ばかり練って練習してしまい、肝心な専光寺という特別な場所を使ってのパフォーマンスなのに空間を意識した作品づくりが出来ておらずそこが今回の最大の反省点となりました。
他の受講生の皆さんはお寺のつくりを活かして作品づくりをしており見ていて面白かったです。結果として僕の作品は11月に上演予定のVISION +には選ばれず発表の機会を失いましたが順当な結果だと感じています。また専光寺での発表がなくとも今回の自分の作品「voicecape」はしっかり形にし、どこかで発表するという目標が出来ました。

 

全体を通して感じたことは創作と温泉の相性が抜群に良い」ということです。どういうことかと申しますとモノづくりには余白が大切だと感じていて温泉という環境は余白づくりにこの上なく最適だと思います。特に山代温泉の源泉100%の温泉は身体の芯から温まり、頭がクリアになり、雑念が消え物凄い集中力を引き起こしてくれることを体感しました。そういった意味で山代
温泉での創作活動はアーティストにとって貴重で贅沢な環境でそこに三日間没頭出来た自分は本当に幸せだと感じています。

 

改めて今回関わってくださった全ての皆さまと山代温泉に心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

レポート:鈴木明倫(すずき・あきのり)


 

👉「ダンスでいこう特待生」制度:
これまでにJCDNのコンテンポラリーダンス新進振付家育成事業に参加したことのある振付家が「ダンスでいこう!!」特待生対応プログラムにおいて、受講料の免除、移動費の補助等によるサポートを受けられる制度(サポート内容はプログラムにより異なる)。
2024年度の応募要綱▶️ choreographers.jcdn.org/opencall/d24_tokutai_yoko

 

👉鈴木明倫 過去の参加プログラム:
「Enjoy Dance Festival 2023ーダンスを楽しむ2日間」 
鈴木明倫・山木将平/ Humming Earth Project「Lagrima」(札幌)
※「ダンスでいこう!!」開催地からの推薦作品として
プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/2023/program/endanfes2023.html