Choreographers2023 松本公演[関連企画]
「振付家3人のスペシャルトーク!」井田亜彩実・二瓶野枝・横山彰乃

掲載日:2023/12/01

「Choreographers2023」松本公演の関連企画として、作品を上演する3人の振付家にお話を伺いました。
2023年11月18日 会場:栞日(長野県松本市)
進行:藤澤智徳(信州アーツカウンシル) スピーカー:井田亜彩実・二瓶野枝・横山彰乃

※このインタビュー記事は、トークイベントの内容をテキスト化したものです。映像でご覧になりたい方はコチラからどうぞ!

 

ダンスを始めたきっかけ

藤澤:まずダンスを始めたきっかけに触れながら、 自己紹介をお願いします。

横山:埼玉に住んでいます。関東を拠点に自分で振付をして、グループの作品を作ったり、ソロで踊ったりしています。音楽に興味があるので、わりと音に着目した 作品を作っています。ダンスを始めたきっかけは、母が私を出産する時に入院してたベッドの横のお母さんの子どもがダンスをやっていて、その発表会を見に行きました。母は体力作りみたいな感じで運動をやらせたかったらしくて、ダンスと水泳どっちがいい?って聞かれて、物心ついてない時点でダンスと言ったみたいで。でもずっと、いつやめようかなって思いながら・・。1人で部屋で、勝手に踊ってるのが好きでした。

二瓶:何歳の時?

横山:3歳です。

藤澤:なるほど。ありがとうございます。続いて二瓶さん、お願いします。

二瓶:私は福島出身で、6年前に松本市に移住してきました。それまでは東京か、関東圏でダンスの活動をずっとしていて、自分のグループも持ってやっていました。松本に移住してから、また松本での活動をぼちぼち始めてという感じです。
ダンスを始めたきっかけは、お友達のバレエの発表会を 2歳の時に親と見に行って、これがやりたいって言ったらしいのです。でも、バレエはお金もかかるし、親がちょっとそれはどうかなって思ったみたいで、しばらくやらせずに様子を見たら、もうずっとやりたいって言うのと、音楽がかかるとデパートでもどこでも踊っちゃ ていて、これはもうやらせないとまずいかもしれないということで、習わせてもらってからずっと バレエの虜になっていきました。

藤澤:ありがとうございます。では続いて井田さん、お願いします。

井田:私は長野と関東、2拠点で活動しています。出身は富山なんですけど、 3年か4年前に、両親が長野に移ったのが大きいです。私もずっと海外にいたので、夏休みのたびに実家に帰っていたら、まず、空気が良すぎる、山が見えるということですごい癒されて、この地域でも活動したいなと思って、長野でもダンスの公演を打ったりしています。関東では、振付したり、ダンスのお仕事を受けたり、子どもたちとワークショップで楽しく踊ったりといった形で活動をしています。
ダンスを始めたきっかけですけれど、私はずっとバレーボールをやっていて。私、バレーやってたんですっていうと、あーってなるんですけど、あの、ボールの方で・・。走ったり跳ぶのは好きで、私は、高校からダンスを始めたんです。
何をしたいかっていうのがわからなくて、自分の跳んだり跳ねたりのパワーだけを感じて生きてきたんですけれど、その時に、高校のダンス全国大会のテレビ放映があって、その時にカラスっていう作品を見て、人間じゃないものにもなれるんだっていうところに引かれまして。
そうやって自分が信じるものの表現体になるっていうのは、素晴らしいというか、素敵なことだなと思って。私はそこから創作ダンス部に入って、ダンスをやったのがきっかけですね。だから、全然遅いんですけど、 自分で好き勝手動くのが好きで今まで生きてきて、私もやめそびれた ・・。それで活動し続けてますね。

藤澤:高校から始めて、周りの方はどのくらいから始めてる方が多かったですか。やっぱ小さい頃からやってたり?

井田:バレエやってますとか、やってましたっていう方が半分ぐらいで、 私みたいに初心者半分でした。私はできないのが当たり前っていうスタンスで始めたので、どうしたらできるようになるかなっていうのを学んで、吸収するのが結構楽しくて、あ、これができるようになったら、こういう表現もできるようになるんだみたいな感じで、 のめり込んでいきました。

いま、どんな作品を作っていますか?

藤澤:何かしら長野県に縁のある皆さんですね。次の質問です。今、どんな作品を作っていますか。?

横山:長野県在住で何か表現をしている出演者を募った形で、今回は6名の女性の方が、長野県全域から集まりました。皆さんバックボーンが全然違うんですよ。暗黒舞踏や演劇からの人もいるし、いつもは絵を描いているけど インプロビゼーションのパフォーマンスをする方もいるし、70代の方もいるしっていう。誰1人同じような人がいない感じなので、まず最初に会った時に、私の作りたい世界観をやってもらうよりは、その人たちと 会えたこと自体が嬉しいなと思いました。私は動きを作る時に、その人個人の感覚にすごい興味があって。東京とかで作品作る時は、 そればっかりにはもちろんならないんですけど、今回は本当にみんな違うから、アウトラインを渡してどこまで1人1人が変わっていくかみたいなことをとことんやろうと思って、とにかく、感覚が動きに乗るとどうなるかみたいなのをしぶとく、地味にやっています。

藤澤:実際、その6人のバラバラの身体というか、バックボーンも含めて、 普段東京で専門的にやっているダンサーの方々と比べてどうですか?

横山:私の説明って超雑だったんだなって。(笑)パワープレーで作ってたんだなって思いました。ダンサーに対しては。わかるっしょ、みたいな。(今回の出演者に)伝わらないっていうよりは、考えて自覚してほしいなって思って、ちょっと丁寧に伝えていくっていう感じです。 あと、いわゆるダンサーはいろんな人がいるとはいえ、テクニックみたいなのが共通認識であるから、 0.1を説明しなくてもできちゃったりするんですけど、その0.1が今回は本当に全員違うから、丁寧に話す。で、話も聞くっていうことをやっています。

藤澤:ありがとうございます。続いて二瓶さん。

二瓶:私はたぶん真逆で。というのも、1回上演している作品をリクリエーションするので、初演で私の中でやりたいことを作品化したっていう大前提があって、「かれらの森」という作品なんですけど。なので、世界観がそこにもうあるんですよね。 私自身が身近で、生きてる中で感じた疑問や、 生きているとみんなが経験しているんじゃないかなっていうような問題とか出来事というのを踊ってくれるみんなと共有して、そういうことってある?という会話から作り出した作品だったんですね。それを今回ショートバージョンにリクリエーションしているので、結構難しいなっていうのはあります。ほぼ新作を作っているような気持ちで。今回大きく違うのは前回は大人だけだったのが、今回メンバーに小学生が2人加わったというところです。

藤澤:小学生はなんでその座組に新たに入れようと思われたんですか?

二瓶:どうかなって提案してくれた方がいて、ちょっと想像しました。

結局、子どもたちが幸せであること、大人たちが願うのはそこなんだよなぁって。人間のことをテーマにしているので、子どもと一緒に創れたらいいなと思って決めました。

藤澤:実際にリハをしてて、どうですか?

二瓶:そうですね。これからどういう風に変化していくかっていうところもあるんですけど、でもやっぱりいいですね。すごく新鮮なものを連れ込んでくれる。子どものこの感覚っていうのは、 気付かされる部分は多いですね。作品は、自由に表現するのではない部分も多いのですが、子ども達はすごくクリエイティブに反応していて、おもしろいです。出てもらってよかったなと思っています。

藤澤:ありがとうございます。井田さんお願いします。

井田:まず、私の作品のタイトルが「デスパレート行進曲」っていう、ちょっと破壊的な名前なんですけど。でも私としては、崖っぷちとか、なんか必死な様子っていう、そのデスパレートっていう言葉が、別にネガティブじゃなくて、生きてるってやっぱりいろんなことがあるし、簡単なこともないし、もしかしたら大変かもしれないけど、大きいサイズで見たら、それもいつか笑い飛ばせるというか、ちっちゃい笑いに変えて生きていけたらいいなっていう願いを込めて、作っている作品です。

出演者は長野市でワークショップを行いまして、希望者を募って、6人の女の方が揃いました。10代から50代で、いろんな方々が集ってくれまして、もう個性的なめっちゃ強い女子たちが集まってくれました。私には作品に対する願いはあるんですが、彼女たちがそれをどう捉えているかなというコミュニケーションから始めました。先週クリエーションが始まったんですけど、 日頃のこととか、自分のこととかを色々話したり書き出してもらったりして、そこから動きにしています。やっぱり、彰乃ちゃんも言ってたように、もうね、バラバラ(笑)。いい意味で面白くて。今回は、 振り付けるってなんだろうなって、結構考えてて。なぜかというと、 私の振付より、みんなが出した動きの方が自然なんですよね。もちろんこっちも、その作品のためのアウトラインとして、守らなきゃいけない部分もあるんですけど、彼女たちが生み出した動きっていうものは大切に使っていきたいな、発展させていけたらいいなと思っています。
作る、踊るじゃなくて、一緒に作っているっていう感覚がとても強い 感じになっていて。彼女たちのいいところは、「やります。やってみます」って。なんか体育会系になってきてんのかなみたいな、そういう風潮がなくはないんですけど、何事もトライしてくれるっていうのは、すごいありがたいなと思っています。

クリエーション、私も雑だったっていうことを今思い知らされているんですけど、 このシーンだけやるとか言いながら、 ごめん、そのまま歩いて、あなたこっちから入って、そこでこけて、椅子運んでどうのこうのとか、結構発展させて続けちゃったりするんですよね。それにも付き合ってくれてます。

どういう景色が生まれて、どういうふうに作品が繋がっていくのかなと、出演者と一緒に行く先を見ながら作ってる感じです。

藤澤:リハーサル始められたということで、登山に例えるなら、 今、何号目ぐらいですか?

井田:実は、分数的には過ぎてしまっていて。作品の方向性としては見えてますけど、かなりスケッチの段階なので、あんまり深掘りしてない段階で。私、全体をまずはどういうふうに見えたいかなって把握してから作るタイプなので。今、流れをざっくり作って、ここから多分また作って壊しの繰り返しだと思うので、 まだまだわからないです。今7合目かもしれないけど、明日には2合目に下がってるかもしれないです。

横山:私は、いま装備揃えたぐらい。

二瓶:井田ちゃんの話聞いてて、 今日は6くらい行ったけど、明日は4ということはあるな。必死に覚えてくれた振りがあったんですけど、ごめん、それはなしっていうことがあって。みんな必死で自主練までしてたけれど。

井田:私も今日それありました!

 

lal banshees「幽憬」 Photo:大洞博靖

Arche Species-種-  Photo:菅原康太

Dance Company Nect 「かれらの森」 Photo:大洞博靖

生活の何%にダンスがある?

藤澤:次の質問です。生活の何パーセントにダンスがありますか?

井田: 多分5、6年前だったら、私、100って言ったと思うんですよ。
当時、毎朝起きた瞬間にストレッチ始めて、最初にトレーニングして1日が始まるみたいな感じで、寝ても覚めてもなんか悩まされてたんですけど。でも最近は、正直6割 7割ぐらいなんじゃないかなって思っていて。

それまで私生活、最悪だったんですよ。家のこと何もしない、ご飯作らない、買ってばっかり、みたいな感じだったんですけど。最近、年もあって、そんなにたくさん踊れない、起きてられないっていうのもあって、買い物行ってご飯作ったり、休みをなるべく作るようにしてどこかに出かけるとか、そういうダンスだけじゃない生活というのを、ここ2.3年ちょっとずつ楽しめるようになってきました。前はそれしたらサボってるんじゃないかと自分で思っていて、ちゃんと考えなきゃいけない、いつでも動けるように練習しとかなきゃいけないとか、まあ脅迫観念ですよね。ダンス始めたのも遅いので、必死に鍛えなきゃみたいなことばっかり思ってた時期もあったんです。でも最近は、年のおかげでできなくなったのもあって、日常の中で自分が好きなことを見つけたり、好きな本読んだり、友達とゆっくり話したりとか、 そういう時間も大切にしたいなって思っています。それがオンオフのいいバランスになっている感じがしていますね。

藤澤:昔は100だけど、今じゃ6、7割。

井田:昔は異常。取りつかれてた。やらなきゃやらなきゃみたいな感じで。でもそういう時のダンス作品って見てて痛いんで。私も振り返ると、なんか、苦しそうというか。

長年の片思いみたいな存在なのは変わってないですけどね。いくらこっちが思ってもね、ほんとに振り向いてくれない時は振り向いてくれないっていう、ちょっと難しい付き合いではあるんですけど、追い込まずに、適度に距離を持ってっていう関わりになってきてる気はします。

藤澤:昔ストーカーで、すごい執着してる痛いやつだったけど、まあ、 ちょっと年齢も踏まえ、大人になったみたいな。たまに会えればいいという・・。

井田:多分しつこい女だったんだと思う。

二瓶:もうほんとに同じで。南国とかに旅行行っても私レッスンしなきゃって。スペースいっぱいあるから、そこで稽古しちゃったりとか、プールの中でも鍛えてるみたいな。 ほんとに、踊ってなければ、1日稽古サボったらもうダメだって思っちゃっていて、だから、お正月の恐怖 。3日やらなかったら私もうダメだみたいな。子どもを産む7年前ぐらいまではそんな感じで やってましたけれども、私生活の変化が あって、体も変化していくわけで。対応しきれない、自分の意思ではどうにもならないものがあって、ほんとに難しいなって。もしかしたら100なのかもわからないんですよね。生活の中で感じていることから振りをつけて作品を創るということを考えると、もしかしたら意識してないけど100なのかもしれない。でもモチベーションって言ったらいいのかわからないですけど、昔と比べると、30パーセントぐらいなのかも。

赤ちゃんって、私が稽古しなきゃってなると泣くわけですよ。どこかにお母さんが行っちゃったと思うのか、 泣くんですよね。すると私の体も、子どもに対応する体になっちゃうから、そういうタイミングじゃないんだなって。少しずつ、違うんだって諦めもありつつ、妥協しながら、今はいい感じの距離なのかもしれないです。

藤澤:じゃあ、例えば逆にお子さんがこれから大きくなって手がかからなくなってきたら、またちょっと昔みたいになる可能性もある?

二瓶:今より、 踊りにかける時間が増えたらなっていうのは、少しは残っていますね。パーセンテージは5パーぐらい上がるかな。

横山:私は結構、2人と真逆というか、 今、大人になってからの方が、その時の体の感じ、風呂に入ってる時どんな感じかとかに 興味が出てきて。100パーセント頑張るぞ、ということでは全くないですが、別にセパレートしてない ですね。ダンスって何。って話になってきちゃうんですけど、 ダンス作品とかに繋がるものって考えると、全部なんじゃないですかね。っていう感じはする。

藤澤:つまり、100?それは年齢によって違うというのはありますか?

横山:そうですね。若い頃、外から見るビジュアルのテクニックみたいなのにガチガチだった時はやっぱり上手く踊らなきゃとかあったから、そういう時はテクニックの練習とかっていう意味で、 やってる時とやってない時とで、体でどういうことを感じるかっていうのもそんなに興味がなかったので、そこはちゃんとセパレートされてたなって、2人の話を聞いてて思いました。

 

自分はダンサー?振付家?

藤澤:次の質問です。「コレオグラファーズ」ということで、自分はダンサーですか?振付家ですか?どっちの割合が多いですか?

二瓶:難しいですよね、結構 分けてるんですよ。本当に両方で。今は作品を作っているのでやっぱり振付家ですね。
でもやっぱりダンサーとして立たなきゃいけない時は、もう完全にその瞬間はダンサーになるから。

藤澤:どうですか、横山さん。

横山:私はダンサーです。

藤澤:即答ですね。

横山:はい。もうダンサー。

藤澤:ダンサーだけど、作品も作る。

横山:はい。自分で作った動きをやってもらうときは、そこからどう発展しようが、別に書かなくてもいいとは思うんだけど、作品の責任者って意味で、それをちゃんと忘れないように「振付」って書くと決めてます。でも、自分の思いとしてはダンサーです。

藤澤:振付家になりたいとは思わないんですか?

横山:振付家ってなんだろうって感じです。あ、踊らない人?
振付家にならないと作品作っちゃダメだよって言われたら、わかりましたってなります。

藤澤:なるほど。ありがとうございます。最後、井田さんお願いします。

井田:私も、ダンサーなのかなって思います。作品を作ってはいるんですけど、ダンサーよりな視点や、ほとんどダンサー的な考えというところもあるので。表現したいものがあるから、今作品作っていますが、それが、いわゆる振付家っていう扱いになるから、そういう呼び名もあるっていうことなんですけど。
踊りたくなくなる時も多いですけどね。 でも、やっぱりダンサーなのかな。自分の思考的にはそっちよりなのかなっていうところですね。

藤澤:便宜上、振付家とクレジットはしているみたいな感じですか?

井田:そうですね。自分が思うダンスが踊りたい、それが見たいっていうところが大きいので、それがそういう呼び方、そういうカテゴリーによると「振付家」になるというところですかね。

横山:今回集まったメンバーを見てると、ダンサーって何って思い始めました。
職業「ダンサー」っていうものじゃなかったとしたら。私の作品に出てくれるみんなは別に多分ダンサーと自分のことを言ってないと思う。けど、割と踊ってる人たち。

藤澤:なるほど。そうですよね。深掘りすると、これ多分終わらないので、この辺で一旦切り上げたいと思います。実は出演者から質問をいただいておりまして。

 

振付家へのいくつかの質問

藤澤:まずは井田さんにお答えいただきたいと思います。

「井田さんのお洋服がいつもカラフルでかわいいです。ダンサーの本番の衣装って、出演者のサイズに合わせて手作りしてるんでしょうか。 こだわりなどあったら教えてください。」

井田:私がズボラなので、目に入ったものを着た結果、多分上下すごいチカチカなんだと思います。 特にこだわりはないんですけど、ズボラな結果、色が色々戦ってるんだと思います。衣装に関しては、 自分のカンパニーArche(アルケ)では、身体が、どれだけその現象として、表現体として、可能性があるかっていうところを追求してるので、基本、身体ラインが結構ちゃんと見える衣装を、衣装さんにお願いしてます。なので、全身タイツが多い・・。ぴったり系が多くて、今回もワークショップで募集した時に全身タイツは着ないんでって、ちゃんと最初に言っておきました。そんなあらわにはさせませんと、注意事項をちゃんと述べてきました。

藤澤:全身タイツはなかなかハードルが高いですね。

井田:私、好きなんですよ、全身タイツ。

藤澤:続いて横山さんに質問です。「演劇だと作、演出の役割が割と具体的にイメージできるのですが、ダンス作品においては どこからどこまでが構成で演出なのですか。また、それらのプロセスの流れは決まっていますか。」

横山:私の場合は、構成も演出も振付だし、 振付は構成だし演出なので、どこからどこまでっていうのはないです。全部。

藤澤:全部。もう、構成も演出も振付も全部一緒?

横山:はい。自分の作品作るときはそうです。例えば仕事として構成だけやりなさいみたいな感じになったとしたら、シーンのつなぎ方とか、動線とか、動きとかに色がついちゃうことはしない。演出的なことを何も指示しない。コマとしてどう動くか、どういうシーンになっていくかっていう。 でもそれは自分の作品では全部一緒くたなので、分けて考えてないです。

藤澤:じゃあ実際に振付を渡しながら、もうその瞬間に作品全体の流れの中に位置付けてるということですか?

横山:そうですね。で、演出にけっこう気を使っていて。とにかく演技をしてほしくないって思ってて、とにかく踊りを全うしてほしいっていうのがいつもあるので。表情に関しては真顔とかしか言わないんですけど、もっと悲しそうにとか、そういう感情が出ちゃうような演出は一切しないっていうか、むしろ消していく方のことをしてます。
プロセスの流れ?順番はそのシーンによって全然違うから決まってないです。

藤澤:会場からも質問を受け付けたいと思います。

会場:コンテンポラリーダンスって、振付家とかダンサーによって、色とか形が全然違うなっていう印象を受けています。元々テクニックとかをすごい磨いていたたけれど、生活とかの変化で、そうじゃないダンスに変わっていった・・。それは多分、時間とか私生活のこともあると思いますけど、人の体の良さを引き出すようなダンスの作り方へ変わったことのきっかけとか、 その感覚とかがもしあれば聞きたいです。

二瓶:私はもう完全にそのきっかけは明確にあるなって思っていて。東京でずっとやっていた頃は、一緒に作る仲間、踊る仲間はみんなダンサーだったんです。
学校でも教えてたけれど、もうそこは違うっていう風にしちゃっていました。今はその必要はないと思ってるけど。ダンサーとやるときはここではがっつり作品を作って振付をして、みたいなことをしていて、そもそも私も東京に行ったのは、そういうことがしたかったからでした。地方から東京に出ていって、バレエじゃない、もうちょっと新しい今の踊りを学びたいって言って東京に出て、そして東京で色々やってて、松本に移住することになって、なんか戻るような感覚が実はあったんですよね。

でもこの松本での、長野での経験で、ダンサーじゃない 身体や感覚の人とクリエーションをすることで、それこそさっきの話で雑だったってすごい頷いたんですけど、(ダンサーと作っていた時は)こんなにも私適当になんかババババンってやっちゃって、そんなつもりはなかったけど、ちょっと流れ作業な部分あったのかなと。
1人1人こんなに違うことを考えて、違う身体を持っているはずなのに、みんな同じようなトレーニングをしているから、バレエとかってそうですよね。同じような体を作っていくっていうのがあるので、そこでちょっと見失っちゃったんだなっていうのに気づかされたのがきっかけとしてはあります。あとは生活環境とかももちろん影響あるんですけど。

 

藤澤:ありがとうございます。

最後に一言ずついただきたいと思います。

井田:自分を表現するって勇気がいることだと思うんですよ。 今回、私の作品、メンバー6人なんですけど、本当にすごく自分の内面を見せながら、 お互いに腹を割りながらすごい色々な瞬間を今頑張って作ってますので、出演者のあの輝きを、ぜひぜひ見に来ていただけたらいいなと思っております。 よろしくお願いします。

二瓶:長野、松本でこういう風に4組の振付家が作品をそれぞれ出して、それを見るという機会は初?コンテンポラリーでなかなかできることではないと思っていて、私もすごいワクワクしています。
私が1人でやるっていうことの方が多かったので、こうやっていろんな 作風、もう明らかに話を聞いて、あ、違うなって思っているので、いろんな作風と触れ合える舞台になるんじゃないかなと、私自身もすごく気づかされることが多い気がしているので、ぜひ皆さん見にいらしてください。よろしくお願いします。

横山:本番は2回しかないんですけど、舞台上だけじゃなく、稽古の時とかも 全然違ったり、どういう風に変わってくのかなとかっていうのも見てて 面白いと思うので、もし見たいという人は分藤さんに連絡いただけたら。私の稽古は毎週土日やってるので、来ていただいても大丈夫です。リンゴを食べて練習してます。本番も是非来てください。よろしくお願いします。

藤澤:3人それぞれいろんな側面、素顔が見れたように思います。本番は12月の7日、8日になりますので、チケットまだの人はぜひお願いします。
ダンスの前に、45分間、私と、分藤さんと、吉川さん、黒岩さんという方々で、喋る機会があります。 そちらもお時間がありましたらお立ち会いただければと思います。

本日は皆さん、ありがとうございました。(終)

 

※映像はこちら↓

プロフィール 
振付家
 井田亜彩実(イダ アサミ)二瓶野枝(ニヘイ ノエ)横山彰乃(ヨコヤマ アヤノ)
進行 藤澤智徳(フジサワ トモノリ)

「Choreographers 2023 松本(長野)公演 次代の振付家によるダンス作品上演&トーク」
2023年12月7・8日(木・金)19:00開演 プレトーク18:00~18:45(17:45開場)
会場:まつもと市民芸術館 小ホール

公演チケット発売中! 予約購入はこちらから。
https://choreographers.jcdn.org/reservepost

 

Interviewee

インタビュイー

井田亜彩実
Asami IDA

<活動拠点:長野・東京>振付家・ダンサー。富山出身。長野と東京に拠点を置き、「人との繋がり」をテーマにワークショップや作品創作を行う。2020年よりダンスグループ「Arche」主宰。筑波大学・大学院にて舞踊学を学ぶ。2013-2014年文化庁新進芸術家海外研修にてイ…続きを見る

Interviewee

インタビュイー

二瓶野枝
Noe NIHEI

「Dance Company Nect」 主宰、ダンサー・振付家、松本秀峰中等教育学校講師幼少よりクラシックバレエを始め、お茶の水女子大学舞踊教育学コースにて理論・実技ともに舞踊を学ぶ。在学時より国内外数々の舞台に立ちダンサー・振付家としての活動を開始。全国舞踊コンク…続きを見る

Interviewee

インタビュイー

横山彰乃(lal banshees)
Ayano YOKOYAMA

ダンサー / 振付家長野県大町市出身。感覚に着目した独自のムーヴメントを探求する。見落として通り過ぎてしまうような現実をファンタジックに切り取り、音と緻密に繋がる性別に囚われない振付と情景を意識した空間作りで感覚を掘り起こし、包みきれないものや意図せず…続きを見る