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レポート/アンケート

講師等 上演作品振付家

砂連尾 理

振付家・ダンサー/立教大学映像身体学科教授

<Choreographers 2024 札幌公演> ※リバイバル作品を再演

-あなたは、どういう振付家を育てたいと思いますか。

ダンスの歴史的背景や現代社会の状況、そして多様なアート表現に対して意識的である振付家を育てたいと考えています。
ただし、それは単に西洋中心のアートマーケットで評価されている作品や振付家に精通することだけを意味するのではありません。そうした既存の価値観に対して批評的な視点を持ち、同時に自分自身の内に無意識に形成された価値観についても常に問い直せる人材が誕生することを願っています。

 

-また、そうした振付家を育てるために、何が大事だと考えていますか。

問題意識を頭の中だけで考えるのではなく、実際の現場に自らの身を置きながら実践を通して考え続けることが大切だと思います。
例えば教育現場や福祉施設、震災被災地など、必ずしも直接的なアートの現場ではなく社会課題を抱えた場所で、実践しながら思考し、身体表現を模索するような「思考と実践の往復」が重要なのではないでしょうか。

 

-実際に行ってみてどうでしたか。また、期待していたこと、これから期待することなど、お聞かせください。

私たちが実施したのは、約20年前に創作したデュオ作品を現在の20代の若いダンサーに振り写し、踊ってもらうというプロジェクトでした。このプロセスを通じて、自身の身体性に基づいて作られたコンテンポラリーダンスの他者への振り写し、そしてその継承の可能性を探れたことが最も大きな収穫だったと感じています。
また、昨年の京都での上演後、今回新潟という土地で再び上演するにあたり、若いダンサーと作品についての対話を継続的に重ねることができました。それにより作品解釈が深まっただけでなく、私自身も作品に対する新たな発見があったことは想定外の喜びでした。
その後、私は立ち会えなかったのですが、若いダンサー二人がベルリンに移住する寺田さんの送別会で「男時女時」を彼らなりにアレンジして踊ったと聞きました。
今後も、若いダンサーたちには手渡したダンスを彼ら自身の解釈で発展させ、さらに何年後かには次の若い世代へと私たちの作品をつないでいってほしいと願っています。

 

<Enjoy Dance Festival 2023>

-あなたは、どういう振付家を育てたいと思いますか。

ダンスというメディアは身体表現なので、身体技法の研究、技術を研鑽し磨いていくことに意識的であることは振付家としては基本的なスタンスであると考えます。そういった身体に対しての意識はもちろんのことダンスにおける音楽性、また舞台芸術における歴史性、時代性をきちんと認識しながらダンスとして何を表現するか、その問いをきちんと立て、それらの問いに対する思考を巡らし、それらをを支えていくだけの哲学をきちんと持った振付家を育てたいなと考えます。また、表現が自分の身体の探究や劇場内での表現方法に閉じることなく、社会と繋がっていくことも同時に重要で、その為にも時にはスタジオや劇場を飛び出て、様々な現場にも身を置きながら思考、実践を往復し表現を考えていけるような振付家を育てたいです。

 

-また、そうした振付家を育てるために、何が大事だと考えていますか。

先ずは振付家自身が自分で考える力、それを表現していけるだけの技術の研鑽は重要ですが、特に舞台芸術に於ける表現は一人だけで作られるものではないので、それを協働していけるだけのチーム作り、どのようなスタッフと出会い、信頼関係を深め合っていけるかという視点もとても重要です。そして、そこで作られた作品を育ていく劇場のような場、その作品が必要な場に届けていくプロデューサー、また芸術を味わい、思考する観客も同時に必要で、それらの関係性が円滑に循環していける環境作りが重要であると考えます。それらを総合して考えると、振付家を育てるというのはコミュニティー、延いては民主主義社会を考えることにも繋がっていくのではないかと考えます。

 

-実際に行ってみてどうでしたか。また、期待していたこと、これから期待することなど、お聞かせください。

今回のリバイバルに際して、私のパートはパートナーである寺田みさこさんの振付のようにバレエの型をベースにして作ったものではなく、自身の身体性に基づいて作った振付であったため、それがはたして他者の身体に振付られるのか?しかも20年の時を経て今の時代の若い人にその振りは受け入れられるものなのか?といった戸惑いを持ちながら今回のリクリエーション作業に臨みました。ただ、作業を進めるにつれ、当初の心配をよそに、今の若い人たちにも私の振付、そして私たちのダンスを受け入れ、楽しんで踊ってもらえたことが今回参加して何より良かったなと感じました。そして、彼らとのリクリエーション作業を通して、個人的には20年前に私たちが取り組んでいたことに対して距離を取り、客観的に見ることができたことも大変良かったです。それは、私たちのダンスにはユニゾンをすることや、目を見つめ合わることがほとんどなく、また、コンタクトの動きなど、デュオのダンスであれば、よく用いられる手法も用いられることが少ない私たちの方法論について改めて考える機会となり、デュオとは何か、またダンスとは何かといった問いを考えることに繋がっていきました。そして、その問いはリバイバル上演が終了した今も続いていて、今回出会った若い4人のダンサーとの関係は引き続き継続し、オンラインを通して我々の振付に対しての研究、その言語化作業を行なっています。今後、これらの作業を重ねていくことで、ここで紡いでいく言葉が映像記録とはまた異なった形式のダンスのアーカイブになっていくと良いのではと考えています。そしてこれらの作業の先には、作品の振り移し作業が我々の手を離れ、今回の振りの受け手だった彼らが、更にその次の世代への繋ぎ手になっていくことになることでコンテンポラリーダンスのアーカイブ、継承という問題を考えていけることに繋がれば良いなと思います。