【ダンスでいこう‼2024】北九州:短期集中ゼミ『振付を探る9日間の冒険』が始まりました。
2024.12.3

ダンスでいこう!!北九州プログラムが、11月30日からJ:COM北九州芸術劇場の協力のもと、創造工房・稽古場で始まりました。講師は、韓国の振付家チョン・ヨンドゥさん。
初日から10:30~18:30まで、午前中はウォームアップ、午後はレクチャー/クリエイション/フィードバックと、1日中、みっちりワークショップをしています。
ウォームアップは10時半~12時半まで、身体と心をリラックスすること、呼吸で動くこと、それがダンスをするときと同じであることを繰り返し伝えられます。
クリエイションは、一人一人が動きを創り、1日の終わりにショーイングして受講生同士で見合い、一人一人が感想や意見や質問を言葉にして伝える時間をしっかり取ります。
このWSでは、感情や欲望を排して、動きの原型を作り、それを変形させていくことが条件で、その理由は毎日のように話されていますが、たぶんモダンダンスからの歴史を通らずにコンテンポラリーダンスを始めた受講生(それを見る私も含めて)には、振付の概念から変えていく作業にも見えます。
1日目の終わりに、ヨンさんが受講生に伝えた言葉をメモ。
「この講座で皆さんに考えてほしい事。魅力的なもの見せたい、下手なもの隠したい、そういう事ではなくて、振付にとって自分に必要な事は何か。
何かが不足しているなとか。緊張するなとか。それに向き合って、戦って。そこから自由になることが一番大事なことです。」
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2日目の午後は、特別講師「スーザン・バージュによる公開トーク」を行いました。
スーザン・バージュさんは、1940年生まれ、なんと現在84歳!!
アメリカの小麦畑が広がる田舎に生まれ、「4歳の時にラズベリー摘みをした時の身体の記憶が初めてダンスを感じた経験」というお話から始まり、
どうやってダンスに出会ったか、ご自身の振付の概念を形作ったキーパーソンとの出会いや体験のお話の中に、
1945年アメリカでモダンダンスからコンテンポラリーダンスに転換した理由が3つあったこと、
そして1970年代フランスに渡り、ヌーベルダンスへの移行期までのお話しがあり、、スーザンさんの人生の30年分のお話まででなんとトーク予定の3時間が過ぎ・・。
残り約40年分を3時間以上かかるところ1時間半ほどに短縮し、端折っていただきつつ、次のような話を聞きました。
ちょうどスーザンさんがフランスに渡ったころ、ミッテラン大統領になって全ての状況がそれまでと変わり、潤沢な予算が付くようになり、国立のダンスセンターがいくつかできて、カンパニーが増え、世界中をツアーするグループが増えたこと。
それまで個人の仕事だったことが、専属のスタッフ、制作を雇い管理できるようになって良い作品が生まれたこと、
そして48歳で人生の集大成といえる作品を創り、終わって何もしたくないと思うぐらい大変だったこと。
フランスでの振付家の活動に終止符を打つ決断をした後、フランス政府から「ヨーロッパ文化以外の国で、空間の使い方をどういう使われ方をしているかの調査」を頼まれて、エチオピア、シリア、ギリシャ、台湾、日本、インドに1か月づつ滞在した中で、
1987年に日本ではじめて舞楽を見たこと。日本でたいへん重要なものを発見した1か月だったこと。
曰く、「自分は日本について何も知らなかった。舞楽や神楽は、お面、衣装、動き、まさにミニマルアートでありコンセプチュアルアート、コンテンポラリーダンス、全てがミックスされたものと感じた。」「彼らはなぜ人は踊るのかを理解しているようだった。」
「踊る目的はそもそも何か。私は、ダンスには全ての力を掘り起こして、更に協調して呼び起こして結び付ける力がある、と思う。」
その後、再び1992年に来日(ヴィラ九条山の第一号レジデンスアーティスト)し、5年間京都の7名のダンサーと創作をしたこと。
その時にどんな振付方法を用いたかの具体的なお話し。
スーザンさんの長年の疑問・興味は「人はなぜ踊るのか」を探求すること。
「人は何の目的で踊るのか?
2024年現在の私にとってダンスとは?
(アミューズメントの感覚で)美しいから踊る、これで踊りだというなら誰でもできる。
いま2024年、この先、あなたのダンスをどうしていきたいのか。それを考えてほしい。(それを考えるのは、あなたたちの順番!you are turn!)」というメッセージ。
ご自身が人前で踊った最後のダンスのお話し・・・。
終始、大事な言葉は語気をはっきりと強くして、上半身を動かしてお話しされるその姿は、ダンスそのもので、
休憩も取らずに4時間を超えるトークが終わった瞬間、観客席はスタンディングオベーション。
心からの拍手が小さな会場をしばらくの間包んでいました。
こんなトークは人生でもなかなか味わえないものでした。
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ヨンさんからいつも聞いていた概念の話は、スーザンさん、さらにその師から連綿と受け継がれ、それぞれに概念化された考えであることを理解できた1日でした。
さて、8名のワークショップ受講生はこれから何を受け取り、
今の自分にとってダンスとは何かを、どう概念化していけるのか。
生半可なことではないし、すぐ成果がみえることではないかもしれないけれど、楽しみです。
(レポート:JCDN神前)
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