【ダンスでいこう‼2024】札幌:『サッポロコレオ2024』が終了しました!
2024.12.27
「ダンスでいこう!!」札幌プログラム『サッポロコレオ2024』が11月15日に終了しました。企画・運営の森嶋拓さんとJCDNによるレポートをお届けします。
■振付家を目指す若手を対象とした各地のプログラム:ダンスでいこう!! 2024
札幌:『サッポロコレオ2024』
2024 年 11月12日(火)~15日(金)@ターミナルプラザことにPATOS
*最終日(15日)にショーイング&ディスカッションを開催
講師:きたまり、平原慎太郎 ゲストアーティスト:鈴木涼子(美術)、高橋正和(照明)、田仲ハル(舞踏)
参加振付家:小林萌(東京)、タイラハルカ(札幌)、山崎彩美(札幌)
*ショーイングのみ参加振付家:今井琴美(東京)、おかだゆみ(東京)
プログラム詳細:https://choreographers.jcdn.org/program/d24_sapporo
1日目は飛行機などの関係もあり、参加者各自が朝からお昼にかけて少しずつ集まってきました。なんとなく一日のスケジュールは仮で組んでいましたが、まず何よりも大事にしたのは参加される振付家の皆さんとの話し合いです。
会場のPATOSも舞台の設計を自由に変えられる空間のため、話し合った結果、縦向きにも横向きにも使用できるように舞台を設定することにしました。このように、土台となるスケジュールはあるものの、振付家・メンターとスタッフがその都度話し合って「今日何をするか」「これから何をするか」を決めていきました。
また、ホールの他にもギャラリー2部屋を使用して、2グループに分かれたり、みんなで作業をしたり、1人で考え込んだりということが可能でした。4日間と考えれば短いように感じますが、場所は朝10時から夜10時まで12時間使えますので、48時間に及ぶ過酷な作品との向き合いの始まりでした。
夜は鈴木涼子さんを迎えてアーティストトークを行いました。
まずはじめに鈴木涼子さんのこれまでの活動を紹介していただき、アーティストとして大事にされていること、ステイトメントのこと、アーティストとしての方向性や見せ方について、作品の創作論や考えること。たくさんのトピックについてお話いただき、そのままディスカッションへと移行していきました。キャリアのあるアーティストから的確なアドバイスや激励をうけ、一日目は終わりました。
2日目は同じようにまた話し合い、からの各自のクリエーションに移行し、メンターは寄り添いながら的確な投げかけをしていきます。平原さんときたまりさんに共通しているのは目。
「なぜ、これはこのようにするのか。」「なぜ、これが必要なのか。」
乱暴な言い方にならないように繊細に言葉を選びながらも、巧みに作品の弱い部分を指摘します。それぞれの中でぼんやりしていた動きやテーマの輪郭をメンター達にクリティカルに突かれ、ウっ!となる作家たち。しかしその眼はむしろ活き活きと光を帯び、ぶつぶつとまた作品に向き合い始めます。これがひたすらに繰り返された時間でした。
夜は田仲ハルさん。
作品の創作論などに関しては前夜の鈴木涼子さんがほぼカバーしてくれたので、ハルさんは急遽少し違う見せ方をとることに。アーティストとしてのキャラクター性やアティチュード(姿勢?)が中心で、これはこれで非常に視野が広がりそうな時間でした。
この企画全体の中で意識していることはinとoutです。それはもちろんインプット(知識、他者の作品)とアウトプット(言語化、自分の作品)ということもありますが、北海道の外と中ということでもあります。
北海道の作家は基本的にインプットの機会が少ないので、知見が限定的になりがちです。一方で関東の作家はインプットの機会が多く、自然とどの情報を選択するかが求められるので、情報過多の中で苦しむということがあると思います。
脳のデータ容量に余裕がある北海道の作家は、いろいろなスキルを持っている関東の作家と時間を共にすることで、これまでに無いインプットを得ることができます。関東の作家は北海道でほどよく遮断されることで、自分にとことん向き合うということをしやすくなります。この両者の相互関係というのが非常によくて、地域を越えて参加者を集めるということで生まれる作用を毎回感じています。
特定の地域だけで特別な何かが生まれるということは少ないと思います。北海道だけ、関東だけでは生まれません。私たちは交わるということが必要なのです、そうでないのであれば人類には旅など必要ありません。
それぞれの地域で、それぞれの特性を活かしたプログラムが組まれる。そこに全国の様々な作家が集まり、刺激を与えあいながら成長する。それが全国で作家を育てる意味なのだと思います。
レポート:森嶋拓(CONTE Dance Production)
『サッポロコレオ2024』は、企画・運営の森嶋拓さんが札幌を拠点に続けてこられた若手振付家育成プログラムの2024年版で、JCDNのコンテンポラリーダンス新進振付家育成事業として一緒に行うのは2019、2020、2022、2023に続いて5回目になります。
今年は昨年度から大きくプログラム内容が変わり、選考で選ばれた3組の振付家が自身の作品を持ち込み、講師やゲストアーティストと共にその作品をさらにブラッシュアップさせていくというものでした。具体的には上記の森嶋さんのレポートの通りです。
11月12日〜15日の4日間、参加した3組の振付家と濃密な時間を並走した講師は、京都・札幌を拠点に活動するきたまりさんと、北海道出身・現在は関東と2拠点で活動する平原慎太郎さん。また、ゲストアーティストとして鈴木涼子さん(美術)、田仲ハルさん(舞踏)、高橋正和さん(照明)にお越しいただきました。
私は3日目の午後遅めの時間から本プログラムに立ち合いしましたので、3日目と4日目についてレポートします。
3日目は、「ダンスでいこう!!」札幌の週末に同時開催した「Choreograhpers 2024」札幌公演のテクニカルスタッフ見せがありました。「Choreograhpers 2024」に「ダンスでいこう!!」札幌作品として参加する振付家の小林萌さん、タイラハルカさん、山崎彩美さんが、それぞれ作品を素明かりでショーイング。
その後、「ダンスでいこう!!」の講師2人から、作品がどのように見えているか、どうすれば作品で伝えたいことが表現できるのかといったアドバイスを受けていました。
きたまりさんが後に「Choreographers 2024」札幌公演のアフタートークで『講師が伝えたいことは同じ内容だけど、二人とも伝え方や言葉の選び方が異なるから、振付家たちは話を理解するのが大変だったと思います!』と語られていましたが、講師の一つ一つの言葉に刺激を受けている様子は、見学していても伝わる熱いものがありました。
3人それぞれが、悩みながら講師と対話を重ね思考している様子は、とても豊かで贅沢な時間で、4日間の間に、構成、音楽、衣装などの要素に日々改良が加えられていきました。
【写真左から】小林萌、タイラハルカ、山崎彩美 通し後の様子
3日目のゲスト、照明家・高橋正和さんの講座では、みんなが車座になりリラックスした雰囲気でお話を伺いました。
高橋さんは照明会社で3年間勤めた後、フリーランスで主に照明デザイナーとして活躍されています。長いキャリアでの様々な経験、作家とのコミュニケーションの取り方や、照明デザインをどのように創っているかといったお話を聞きました。
高橋さん曰く、『照明のデザインを考えるためには、できるだけ稽古場へ行き実際に作品を見て、作家と話をしたい』とのこと。今回の二つの現場でもよく高橋さんをお見かけしましたし、稽古場だけでなく現場に関わる人たちとの関係性も大切にされていると感じました。
【写真左から】高橋さんのトーク、きたまりさんの(照明のリクエストが書かれた)進行表を参考に会話が弾む
最終日はそれぞれ稽古場に分かれて講師との最後の対話の後、昼頃から最終ショーイングのゲネプロ、そして19時よりお客さんを交えて「ショーイング&ディスカッション」が行われました。
このショーイングには、立会人として初日から「サッポロ・コレオ」に参加していた振付家のおかだゆみさんと、前日夜に合流した今井琴美さんも加わり、5組がショーイングを行いました。
ショーイングの後のディスカッションでは、ゲストの札幌市教育文化会館の桑原和彦さんを交えて、5組の作家から自身の作品についてのお話を聞く時間を持ちました。
この経験を経て飛躍していく振付家の皆さんの今後の活躍がとても楽しみです。
レポート:竹宮(コンテンポラリーダンス新進振付家育成事業2024 広報)
【写真左から】桑原和彦さん、タイラハルカさん、今井琴美さん、山崎彩美さん、おかだゆみさん、小林萌さん、森嶋拓さん
このあとは、「Choreographers 2024」札幌公演のレポートにつづく。準備中!!