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上演作品振付家
ダンサー・振付家
スケールの大きな作品を作れる振付家が育つことを願いますが、日本国内の諸事情を鑑みると、環境的になかなか難しいところではあると思います。ある程度のレベルに達した振付家、或いは可能性の感じられる振付家に対して、劇場がリスクを背負ってでも、そこそこの予算をつけた形での新作委託などをしてくれると良いのですが…。
潤沢な制作費とゆとりのある制作環境、そして再演の機会が沢山あると良いと思います。
今回リバイバル作品を上演するにあたり自らの当時の状況を振り返ったとき、ある意味とても恵まれた環境にいたのだと改めて感じました。『踊りに行くぜ』で度々再演の機会を頂けたこと(色んな観客の目に触れる機会を持てたこと)はもちろんですが、伊丹アイホール企画「take a chance project」に於いて、数年に渡り3作品を制作できる機会を頂けたことは、非常に大きな成長に繋がったように思います。
それと、もう少し入り口の部分としては、安価で(なんなら無料で)使いやすく、開けた環境、つまり交流の場となりうるような稽古場があると良いと思います。個人差があるとは思いますが、時間的な<ゆとり>は、作品に豊かさをもたらす大きな要因であると考えます。
今のところ現実的ではないかもしれませんが、大学教育の充実が進むことは重要だと思います。実技と研究、日本の伝統なども含まれたアカデミックな学びの場が充実すれば、育成の環境は大きく変わるだろうと思います。更に大学内の稽古場が使用でき、他分野の学生との交流も図れるだろうし、何よりも時間にゆとりがある!言うは易し…ですが。
とても充実した作業が出来たと思っています。今回はそもそも予定されていたリハーサルの総数が少なく、飛び飛びでのリハーサルになりましたが、寧ろそのことにより、各々がリハーサル外の時間に自分のやり方で更新を図ることが出来たため、より大きな飛躍に繋がったのではないかと思います。ジャレミサ作品は、そもそも<ジャレ>と<ミサ>の作り方や拘りポイントなどにずれがあることが直接作品性に繋がっているところもあり、さらに今回はダブルキャストだった為、デュオ作品でありながらも多様性を孕んでいるという本質的な部分に、これまでとは違った形で踏み込めたのではないかと思います。
キャストによって印象が大きく変化する、という事実は、演出サイドの実感でもあり、観客からも多くの感想が寄せられたところでした。当然と言えば当然のことなのですが、それが作品であるからには、印象が<変わって良い部分>と<変わってはいけない部分>があるのではないかと思います。今回の<変化>については概ね良い方向、作品の面白みを増幅させる方向であったと思いますが、逆に、<変わってはいけない部分>(本当に変わってはいけない部分があるのかどうか?)についても、今後もう少し考えてみたいと思います。このことは、現在進行中の「男時女時アーカイブプロジェクト」の中でも引続き考えてきたいと思っています。
小屋入りから本番にかけて、もう少し時間にゆとりが持てると良いだろうとは思います。
私は今回演出の立場だったので、全作品観ることが出来ましたが、もし自身が出演していたとしたら、あのタイムテーブルの中ではなかなか他作品を観る余裕は持て無かったのではないかと思います。