Report/Survey

レポート/アンケート

上演作品振付家

岡市悠暉

振付家・ダンサー

<2025年度>

京都振付実験室2025

参加されたプログラムについて。発見したこと、吸収できたこと、振付家(または振付家を志している)の方は、
特に今後の活動のプラスになったことなど。

 構想段階の作品をテクニカルを含めて上演できたことはとても貴重で、贅沢な機会でした。また、ワークショップで3人の振付家に出会えたことで自分の枠組みで捉えた振付ではなく、これまでなかった視点や手法を得て、模索しながら作品に向き合うことができました。
 私にとって振付家・出演者として今の地点や課題を示すものとして、上演後のフィードバックが特に大きな学びとなる機会でした。今回、私が作品の中で大切にしたかったことは「実感のある身体」です。作品の素材である動きを生み出す段階から、いまある身体の状態を受け入れ創作し、タスクを超えて自由な身体であることを目指していました。また、クリエーションにおける良い関係性についても考えたいと思っていました。しかし、いただいたフィードバックには「作品の中にシークエンスが多い」「タスクに追われている」「2人の関係性が見える」というものでした。作品を作り上げることに必死で、無意識のうちに整えることを強くしていたと自覚しました。作品タイトルや解釈をどう作品として見せるか、ということに注力してしまい、目指す身体や関係性のことを忘れていたとその時に気づきました。また、作品には性格的な部分も含めて現われるものだと強く感じました。
 これはネガティブな発見ではなく活躍する振付家の方と出会い、これまでとは異なるアプローチや意識を持つことの面白さを教えていただき、それらを取り入れながら作品として形にしたからこそ得た気づきです。客観的な視点をもちながら、構成を整えていくこととその時だからこそ生まれる予測不能な面白さを作品の中にいかに組み込んでいくか、そして身体ということについてこれから考えていきたいです。一貫して持ち続けるべきコアな部分と、手放すことも含めて自由に変えていける部分についてこれからなにをどのように選択していくかという大きな問いをいただいた気がしています。

プログラムに対してのご意見・ご感想など。

 東野洋子さんのWSでは舞台作品を作るにあたって考えられる要素についてのお話が印象に残っています。振付というものがいかに総合演出であるのかということを知り、どこまでこだわりを持って追求し続けられるのかが振付家に求められる大事なことのように感じました。
例えば、音でどのような世界を創りたいのか、音はどんなふうに聞かせたいのか、ではどこにスピーカーをおけばいいか、置いたスピーカーからどう音を出すのか、音量はどのくらいで、、、ということが各シーンごとに照明、美術、衣装、客席など、様々な要素でこだわることができる。舞台作品に関わる要素がどれだけあるのかを広げてみて、踊る作品を考えるだけが振付家ではなく舞台全体として広く捉えることを学びました。
 中村蓉さんのWSでは、これまで発表した作品がどのような着想を得て立ち上がってきたのかということをお伺いしました。蓉さんが面白いとおもうことを聞き、またその繊細で細かな捉え方に驚きました。創作アイデアのアンテナに触れた時、その現象がなぜ起きて、どんなメカニズムを持っているのかということまで興味を持たれていると感じ、その深さに衝撃を受けました。着眼点を真似るのではなく、私にとっての面白いと思う世界を解剖していくことがオリジナルになることを教えていただいた気がします。今、私が面白いと思っていることすらも、本当に面白いと思えていないかもしれない。まだ別の興味関心が私の中にはあるかもしれないという可能性を感じています。
 黒須育海さんのWSでは、将来へのビジョンを持って活動することを教えていただきました。ただなんとなく目の前にある自分に当てはまりそうなものに飛び込むのではなく、振付家としてどうありたいのかということを考え、そのために必要なことがなんなのかを考えさせられる機会でした。それは自分の意志と動機を持って臨む、基本的なことだけど大変で、大切なことだと思います。また、振付には頭も身体を柔軟にすることが必要で、そのためのトレーニングが必要。意識しないと動かない身体を使おうとすることが、柔軟を生み出し作品を創る上で行き詰まりを抜けだすヒントになることを教えていただきました。舞台の上にあるのは身体で、その根源を耕すことを忘れてはならないとハッとさせられました。
 振付家WSの中で毎回プレゼンテーションの機会があり、そこでは進行している作品について立ち止まって考える良い機会でした。伝えるために言語化するということは自分の思考の整理となり、これから進みたい方向性を示すものでもありました。また、プログラムに参加されている他の振付家と定期的に出会い、最終的に出来上がった作品を見れたことも刺激的でした。似たような境遇でそれぞれの作品を作るために努力している人がいることはそれだけで力になりますし、制作の方も含めて意見を交換できる人がいるというひとつのコミュニティが心強かったです。テクニカル面でも、なんとなくのイメージを伝えると、そのイメージを汲み取りアイデアを提案してくれて、やりたいことをとことん一緒に突き詰めてもらえたこともありがたい経験でした。経験や世の中の認識から良いとされている形に囚われるのではなく、集まった人が意見を交わしながら良いと思うものをともに作ろうとする姿勢が、作品を作る上で大切な精神のように思います。


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