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振付家・ダンサー
2025年11月の京都振付実験室の中から推薦していただき、初振付作品で初めてフェスティバルに参加するという機会をいただき、クリエーションを更に重ねて深めていくことが出来たことにより多くの発見がありました。
そして大きな違いとしては劇場が変わることによる作品への影響を目の当たりにしたこと、そして何より再演の重要性を感じた。それはダンサーのお二人に続投してもらえたことも大きく影響しており、振付とは人が持つ肉体、思考から発せられるものを含めつつも再現性のあるものが作品となっていくこと、そして積み重ねが重要な為です。
作品におけるダンサーの存在の重要性は割愛するとしてフェスティバルで再演するにあたって多くの混乱も生じることとなりました。
プロデューサー側とのやりとりが増えるなどもありますが、実験室との違いとしては上演の重みが増していくことでした。新たな可能性も探りましたが、今回の作品の構成としては解体・再構築という方法は不向きであるという発見をしつつ、実験段階という危うさからの脱却を試み、決め込んで作り込んでいくという作業が大半を占める中で締め切りから逆算でクリエーションを進めていくという重要性に気付きをもたらし、リサーチの仕方や何に時間をどう使うかを常に現場での状態を見ながら押すか引くかを考えることが多くなりました。
まだまだ作品としては未熟で社会性の乏しさを考えつつも一つの時代や現在の自分の思考を写したものになったのではないかと思います。選んだものを引き受ける強さ、粘り強くコンセプトに向き合う重要性、世界観を表現せず、構図や構成によって空間が立ち上がりドラマが見えてくる。装飾的に扱わずにいるシンプリシティの難しさはあれど世界観は後から付いて来るもので、私はそういう物を作りたく、複合的なコンテキストから観客へ新たな視座をもたらしたいと思いました。
ダンスや日本のコンテンポラリーダンスにおいての逆輸入的あり方に天井を感じ、流れとしてはクラシカルな物への原点回帰の時代がもう来ていると思います。不安定な世界情勢のなか芸術の立場は危ぶまれ、その今何が出来るのか。そういう眼差しを忘れずに、コンテンポラリーダンスの文脈から様々なものの研究を続けていきたいと思います。
振付家として成長する為に必要なこととはなんでしょうか。今回作品を実際に作ってそして舞台で発表してようやくわかったことが多くあります。
作品を構成する上で大きな要素として扱われがちなことは『動き』かと思いますが、ただ動きとしてのムーブメントを生み出すだけでは弱く、作品としての強度を持たせるにはどうするかに頭を悩ませます。
舞踊の文脈を踏まえ、再解釈を試み、示唆する。そこには世情や現代性を含み、問題提起の要素もあります。正直自分の感情はトッピングに過ぎないように思います。出発点として感情があったとしても自身からでてこれず独りよがりな感情のまま終わってどこへも行けないことに陥りがちだと思いますが、それも全て実践した為にわかったことです。
それ以外にも必要なのは人間力と社会人力です。作品作りのプロセスで一番かかる負荷は、作家自身が行う事務作業です。
プロデューサー側とのやりとりに始まり、ダンサーを探し交渉して予定を合わせ稽古場を確保する。クリエーションに入ってしまえばもうやるだけで、そこに至るまでに大変な労力がかかりました。
作品とは自分の好きに作るものではなく、届ける為に抑えるべきポイントがいくつもあり、それらをクリアしないと作品たらしめることはできません。コンセプトとは屋台骨であり、感情を構造に落とし込み引用するなど、多角的な視点を要します。そして一番はダンサーという人間と向き合い、時に励まし合い研鑽を共に積む上でのコミニケーション能力も必須です。
そんないくつもの要素を扱わねばならぬ振付家とは成熟に大変な時間を要します。20代の若者が容易くできることではないことばかりですが、多くのアーティストは30代の壁を越えられません。
主に収入の面での厳しさやモデルロールの欠如、就職のプレッシャーなどを跳ね除けて生き残ることができる人は多くない為に、現在の業界は30代と40代のエアポケットが発生しています。しかし少しでもできることは実践の機会をなんとしてでも無くさないようにすることです。そのために今回京都に目を向けた京都振付実験室は大変意義のあるものだったと思います。関西で上演できる劇場も少なく、振付家1人では公演を打つことは大変困難です。なので今回の企画は関西を中心とした振付家として奮闘しているアーティストの横の繋がりが生まれ、世代間の団結を高めながらも、実践の場での意見交換が生まれコミニティとしての芽生えを迎えました。何より一番良かったのはまだ作った事がない人や未発表の作品を作る機会があった事です。
作品を世に出す手段としてコンテストに応募するなどありますが、それは作品を上演済みであることが要求される事がありますが、そこに至るには多くは実費などでのクリエーションになるとハードルが高いことや、コンテストへの疑問などがあると考えます。フェスティバルに応募しても同様であり、それぞれに抱える問題はその先に続かないことにもあると思いますが、今回の企画ではその手前の状態の振付家へ手を差し伸べるような企画でこの先の発展が期待できます。
何より自身が参加して痛感したことは、作品は作り発表し続けなければならないということでした。そしてこの先も振付家としてやっていく決意が固まりました。失敗を乗り越え評価に晒され、こんなこと辞めても誰も困らないですが、ダンスや総合芸術などの芸術には意義があります。それらがない文化が衰退した世界は本当の貧困に陥ると考えます。
このように今回の京都振付実験室では自身への様々な大きな収穫があり、この先もこのような企画があることを願います。
企画して、ご尽力していただき、そして最後まで伴走して下さって本当にありがとうございました。