Report/Survey

レポート/アンケート

上演作品振付家

新井海緒

振付家・ダンサー

<2025年度>

「京都振付実験室 2025」

参加されたプログラムについて。発見したこと、吸収できたこと、振付家(または振付家を志している)の方は、
特に今後の活動のプラスになったことなど。

振付家として成長する為に必要なこととはなんでしょうか。今回作品を実際に作ってそして舞台で発表してようやくわかったことが多くあります。

作品を構成する上で大きな要素として扱われがちなことは『動き』かと思いますが、ただ動きとしてのムーブメントを生み出すだけでは弱く、作品としての強度を持たせるにはどうするかに頭を悩ませます。
舞踊の文脈を踏まえ、再解釈を試み、示唆する。そこには世情や現代性を含み、問題提起の要素もあります。正直自分の感情はトッピングに過ぎないように思います。出発点として感情があったとしても自身からでてこれず独りよがりな感情のまま終わってどこへも行けないことに陥りがちだと思いますが、それも全て実践した為にわかったことです。
それ以外にも必要なのは人間力と社会人力です。作品作りのプロセスで一番かかる負荷は、作家自身が行う事務作業です。
プロデューサー側とのやりとりに始まり、ダンサーを探し交渉して予定を合わせ稽古場を確保する。クリエーションに入ってしまえばもうやるだけで、そこに至るまでに大変な労力がかかりました。
作品とは自分の好きに作るものではなく、届ける為に抑えるべきポイントがいくつもあり、それらをクリアしないと作品たらしめることはできません。コンセプトとは屋台骨であり、感情を構造に落とし込み引用するなど、多角的な視点を要します。そして一番はダンサーという人間と向き合い、時に励まし合い研鑽を共に積む上でのコミニケーション能力も必須です。
そんないくつもの要素を扱わねばならぬ振付家とは成熟に大変な時間を要します。20代の若者が容易くできることではないことばかりですが、多くのアーティストは30代の壁を越えられません。

プログラムに対してのご意見・ご感想など。

主に収入の面での厳しさやモデルロールの欠如、就職のプレッシャーなどを跳ね除けて生き残ることができる人は多くない為に、現在の業界は30代と40代のエアポケットが発生しています。しかし少しでもできることは実践の機会をなんとしてでも無くさないようにすることです。そのために今回京都に目を向けた京都振付実験室は大変意義のあるものだったと思います。関西で上演できる劇場も少なく、振付家1人では公演を打つことは大変困難です。なので今回の企画は関西を中心とした振付家として奮闘しているアーティストの横の繋がりが生まれ、世代間の団結を高めながらも、実践の場での意見交換が生まれコミニティとしての芽生えを迎えました。何より一番良かったのはまだ作った事がない人や未発表の作品を作る機会があった事です。
作品を世に出す手段としてコンテストに応募するなどありますが、それは作品を上演済みであることが要求される事がありますが、そこに至るには多くは実費などでのクリエーションになるとハードルが高いことや、コンテストへの疑問などがあると考えます。フェスティバルに応募しても同様であり、それぞれに抱える問題はその先に続かないことにもあると思いますが、今回の企画ではその手前の状態の振付家へ手を差し伸べるような企画でこの先の発展が期待できます。
何より自身が参加して痛感したことは、作品は作り発表し続けなければならないということでした。そしてこの先も振付家としてやっていく決意が固まりました。失敗を乗り越え評価に晒され、こんなこと辞めても誰も困らないですが、ダンスや総合芸術などの芸術には意義があります。それらがない文化が衰退した世界は本当の貧困に陥ると考えます。
このように今回の京都振付実験室では自身への様々な大きな収穫があり、この先もこのような企画があることを願います。
企画して、ご尽力していただき、そして最後まで伴走して下さって本当にありがとうございました。


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