Report/Survey

レポート/アンケート

上演作品振付家

石井あずみ

振付家・ダンサー

<2025年度>

「Enjoy Dance Festival 2025」

参加されたプログラムについて。発見したこと、吸収できたこと、振付家(または振付家を志している)の方は、
特に今後の活動のプラスになったことなど。

「Enjoy Dance Festival 2025 in KOBE」という大きな舞台に立たせていただいた経験は、私の今後のダンス人生において大きな節目となりました。
​私たちは、2025年12月に行われた「ダンスでいこう!!2025(『ダンスをつくる芽』松山)」を経て推薦していただきました。当初は大きな舞台に立てる嬉しさと興奮で胸が躍りましたが、そこからの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
まず、推薦された時点、作品の結末が決まっていない未完成の状態だったのです。「自分はこの作品をどう着地させたいのか」「何を感じ、誰に何を伝えたいのか」。自問自答を繰り返す日々が続きました。「アンサンディング・ヒーロー」は最終的に第三者へ向けて、誰かを救えるような存在になりたいというゴールを持ちながら制作を続けていました。「ダンスをつくる芽」では創りきれなかった最後を創り始めるところから再スタートしました。
結果的に、この作品は当初の目標である「第三者へ」まで到達しませんでした。自分たちが「第三者」に対し漠然としたイメージしか持てていなかったからです。具体的に「誰に対して」がないまま、「私たち」でこの作品は終わってしまいました。私は創りきることができなかった。すべてが十分に揃った状態で立てなかったことが悔しく、心の底から自分の力量不足を痛感しました。
いよいよ会館入りし、テクリハ後、JCDNの佐東さんと神前さんから、作品について「同じような調子が続いていて面白くない」「楽しいと思って舞台に立っているのか?」とたくさんのご意見をいただきました。ホテルに帰ってから何度も何度も動画を見返しました。たしかに言われた通り、特に後半が全く面白くなく、自分たちも楽しそうでないし、何がしたいのかよくわからない状態になっていました。舞台に立つ中で、段取りのような動き方になっていたのです。今思えば、作りきれていない最後に気を取られ、そして規模の大きな舞台に尻込みをし、邪念を持ったまま舞台に立ってしまっていたのだと思います。このときの私は焦りと不安で、正直今までの中で一番追い詰められていました。
翌日、他プログラムの作品を鑑賞し大きな気づきを得ました。どの作品にも共通している「ただ目の前の世界に入り込み、没頭し、命を懸けて踊る」、それが私たちにはできていなかったということ、また作品に対するアプローチの仕方、向き合い方がそもそも間違っていたのだと、本番直前にして身を持って実感しました。
そうして迎えた本番、トップバッターということもあり朝から緊張が止まりませんでした。創りきれていない作品、満席の客席、それでも、死ぬ気で舞台に立ちました。ダンサーとともに今ある作品を、今ある身体と気持ちで全て出しきりました。後悔が一つもないのかと聞かれれば嘘になります。しかし、あの場で出し惜しんだことは一つもありません。あのときできることをやりきり、そして、ここまでが今の自分の実力なのだと受け入れました。

​作品を創ることは、自分自身の好きなことや嫌いなこと、あるいは直視したくない部分とも向き合い、それを可視化することだと考えています。現在私は、共同制作というかたちで新たな作品創りを行なっています。えんだんふぇすという大きな舞台に立ったからこそ分かる感覚、たくさんの素晴らしい作品と触れたから感じる違和感やイメージなど、学んだことはたくさんあります。それを惜しみなくだしきり、今度こそ、創りきる。その先に見えてくるものを捉えて作品を生み出す。作品とともに、振付家として育っていく。私のダンス人生に、ようやく輪郭が見えてきました。

 

松山「ダンスをつくる芽2025」

参加されたプログラムについて。発見したこと、吸収できたこと、振付家(または振付家を志している)の方は、
特に今後の活動のプラスになったことなど。

参加させていただいたプログラム「ダンスでいこう!!(松山)」でまず強く実感したのは、自分が思っていた以上に「主観」だけで作品を創っていたという事実でした。これまで、客観的に、俯瞰的に作品を見ようと意識してきたつもりでしたが、実際には自分の感覚や経験に依存した創作になっており、その限界をはっきりと突きつけられました。
また、「伝えたいことがある」ことと「それが正しく伝わる」ことの間には大きな隔たりがあり、時に”間違った伝え方”が存在するということにも気づかされました。伝える意志だけでは不十分であり、どのような方法・構造で提示するのかを慎重に考え抜く必要があるのだと学びました。
プログラムでは、複数のメンターの方々から多角的な意見をいただきました。その中で、すべてを鵜呑みにするのでも、すべてを拒むのでもなく、「選び取り、時には捨てる」という取捨選択の判断を繰り返すことが、自分自身の軸を明確にする作業であると感じました。他者の視点に触れることで、自分が本当にやりたいこと、伝えたいことと何度も向き合い直す機会を得ることができました。
さらに、伝え方には身体の動きだけでなく、空間の使い方や時間の構成が密接に関わっているという、創作の基礎的でありながら見落としがちな要素を改めて学びました。加えて、「とにかく挑戦すること」の重要性も強く実感しました。挑戦し、間違い、指摘を受けることでしか次の一手は見えてこないということを、身をもって体験しました。
年齢や性別、立場に縛られず、それぞれが表現と真剣に向き合うこの環境は、大学の部活動では決して得られないものでした。本プログラムで得た経験と視点、そして悩み方は今後の創作活動において確実に大きな支えとなり、私の振付家としてのこれからの人生を色鮮やかにしてくれると感じています。

プログラムに対してのご意見・ご感想など。

振付家は皆、迷い、悩み、模索しながら、それでも自分を表そうと作品を生み出していく存在なのだということを、頭ではなく体感として理解することができました。私自身、今回が振付家として初めての本格的な作品制作であり、「できないのは自分だけなのではないか」「こんなにも苦しいのは自分だけなのではないか」と感じる場面も多くありました。しかし、同じ空間で、同じような立場にいる参加者たちが、それぞれに葛藤しながら作品と向き合っている姿を目の当たりにしたことで、自分だけではないという安心感を得ることができました。
また、他者の制作過程を間近で見ることで、「そんな考え方があるのか」「そんな進め方でも作品になるのか」といった発見も多く、自分の中にあった固定観念が少しずつほぐれていく感覚がありました。技術や方法論だけでなく、創作に向き合う姿勢そのものを共有できたことは、今後活動を続けていく上での大きな心の支えになると感じています。