【ダンスでいこう!!2025】大船渡「三陸の郷土芸能を習う旅」〈参加者レポート④:葉山悠介〉

2025.11.4

「三陸の郷土芸能を習う旅」に参加した振付家のレポートを順番に紹介していきます!

👉【ダンスでいこう!!2025】大船渡:「三陸の郷土芸能を習う旅」
習った芸能:浦浜念仏剣舞・金津流浦浜獅子躍(大船渡市三陸町越喜来)
日程:10月6日(月)~11日(土)
参加振付家:大久保裕子、大橋武司、坂口友紀恵、白濵凪沙、田村興一郎、葉山悠介、彦根由実
■プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/d25_ofunato

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「我々は生きているから踊る」

 私は、熊本を拠点に活動する中で、熊本地震に祈りを捧げる舞台で神楽と共演したり、文楽と芝居の作品で振付をしたり、和太鼓とダンスの創作舞台を作るなど、様々な芸能に携わってきました。いつかやってみたいという気持ちと、尊敬の思いがあるがゆえに気軽に踏み入れられない気持ちを持っていました。そして、熊本地震から来年で10年を迎える益城町で生活する表現者として、大きな地震を経験した町の姿を見て、それでも続く芸能を体験することが今の自分に必要だと感じ、参加を決意しました。

熊本から飛行機、新幹線、バスを乗り継ぎ約10時間。初日は「浦浜念仏剣舞」「金津流獅子踊り」がどうやって伝わったか、成り立ちなどを説明していただきました。その後、稽古が始まり、扇子を使い、右が左か、何回繰り返すのか様子を見な
がら、師匠方の踊りを真似するうちに、時間が止まるような、ここにいないかのような不思議な感覚を味わいました。旅の疲れもあったかと思いますが、師匠方の踊りに見惚れ、無我夢中で踊ることで、ここにはいない何かと繋がり、踊りそのものが自然と祈りの対象になっていく流れを体感しました。

二日目はアジアリンクのカンファレンスに参加し、三日目には、東日本大震災 津波伝承館に連れて行ってもらいました。郷土芸能を学ぶだけではなく、様々なお話を聞くこと、資料を見ることで学びが深まりました。大昔から津波や地震が何度も起こっていること、自然と共存するための教えがたくさんあることを学びました。カンファレンスで聞いた「供養のために踊る、故人を忘れないために踊る、あの世とこの世を繋ぐものが芸能である」という言葉の意味をさらに理解することができました。そして、自然の脅威にさらされながらも、人々の心の拠り所としての舞や踊りで祈りを捧げることで、続いてきた三陸地方の郷土芸能の強さを感じました。

 

「地面から湧き上がる悪霊を足で踏んで沈める山伏の足の動き」がどちらの踊りにもあり、特に獅子躍では独特なステップがあり覚えるのに苦労しました。口唱歌を覚えて、動きを体に染み込ませないといけないと教えていただきました。口唱歌とは、ザン・ザァンなど身体の動きや太鼓の強弱を音にしたもので、これをベースに踊りや太鼓が伝承されていました。踊りや太鼓の演奏として、表現することは最後まで難しかったですが感覚を共有し伝えていくことの指針になるものだなと感じました。そして、立ち返るべき基本があることの大切さを学びました。ストリートダンスの中でも、ステップが多いハウスダンスというジャンルを長くやっているので、「踏む」という動作に親近感を感じるとともに、悪霊を沈めるために踏むということが私にとって新鮮で興味深いものでした。稽古の途中で、何度も師匠方が踊りを披露してくれました。踊る瞬間に、姿勢や目線、骨格が変わるような印象を抱きました。神が宿ったかのように変貌する姿はとてもかっこよく、踊り終わった瞬間に気さくな表情に変わられる様子がとても人間味を感じさせ、生活の中に芸能があり、体に染み付いていらっしゃることが伺えました。何年も芸能に携わり、舞を通じて祈りや供養をされてきた身体や存在そのものに歴史や思いが引き継がれてる姿を感じ、尊く思えました。稽古中の何気ない一言や動作の中に勉強になることがたくさんありました。特に印象に残っているのが、剣舞の面を選ぶ際に、面のルーツなどを伺った場面でした。「わかっていることもあれば、わからないこともある。疑問に思うこともあるが、先人はもういないので聞くこともできない。ただ、我々は”生きているから踊る。今いる人のことを思い、今はいない人のことを思い踊ることができる”」この言葉とても印象に残りました。「生きているから踊る。」とてもシンプルだけれども、何年も郷土芸能を守り続けた方が言うこの言葉に出会うために、この言葉を自分のものとする経験のためにここにきたのだなと感じました。

最後になりますが、寛大な心で私たちを受け入れてくださり、毎日稽古をしてくださった保存会
の皆様、サポートしてくださったサンフェスチームの皆様、参加者の皆様、企画してくださった
JCDNの皆様に心より感謝いたします。素晴らしい機会をありがとうございました。

葉山悠介