【ダンスでいこう!!2025】大船渡「三陸の郷土芸能を習う旅」〈参加者レポート②:大橋武司〉

2025.10.30

「三陸の郷土芸能を習う旅」に参加した振付家のレポートを順番に紹介していきます!

👉【ダンスでいこう!!2025】大船渡:「三陸の郷土芸能を習う旅」
習った芸能:浦浜念仏剣舞・金津流浦浜獅子躍(大船渡市三陸町越喜来)
日程:10月6日(月)~11日(土)
参加振付家:大久保裕子、大橋武司、坂口友紀恵、白濵凪沙、田村興一郎、葉山悠介、彦根由実
■プログラム詳細▶️ https://choreographers.jcdn.org/program/d25_ofunato

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

三陸の芸能を習う旅に参加して

わたしは現在山形県大石田町で虹のプラザ文化芸術プロジェクト統括マネージャー(地域プロジェクトマネージャー)としてアーティストインレジデンス事業を核に、アウトリーチ、地域向けダンスクラブ、友の会の設立そしてアーカイブ事業の5つの事業を担っています。今回の旅ではアーカイブ事業の観点から参加を申し込みました。というのも、通常アーカイブとは映像や書類の記録を残すことが主な作業と思われていますが、伝統芸能のように口伝ベースで身体や神経で記憶を繋いでいくこともアーカイブであると思うからです。そのためにまずは自身が実践し、リアルな温度やその空気に触れてみたかったので今回参加を決意しました。決意といったのはやはり芸能というものにある種畏れもあり、ダンサーとして芸術家としていままで強烈に影響されて憧れた分野でもない自分がどのくらい足を踏み入れることが許されるのかということを考えていたためです。しかし今回飛び込んだことはこれからの自分の活動にとってとても大きな出来事になると確信しています。いまこの文章を書いているのは10/15ですが、いまだに剣舞のリズムと身体、刀の重さや鈴の音がリアルに身体を通っていく感覚が残っています。また雨が降る中獅子躍の衣装を装着した、あのいつまでも終わらないような不思議な時間が思い出されます。

1日目は古水さんとの顔合わせの日でした。私以外の数名の参加者は前日に岩手入りし釜石での芸能を観てきていたようで少し興奮気味。対照的に古水さんはややこわばった印象で、われわれと対面していたように感じます。早速剣舞の基礎や振付を教えていただけることになり、息子さんの州さん筆頭に徐々に稽古場が熱を帯びていった感じがしました。終わるころには参加者の真剣さが伝わったのか古水さんもすこし嬉しそうに冗談を言い始めたのが印象に残っています。

翌日はアジアリンクの催しで三陸フェスの成り立ちなどについてのカンファレンスが行われました。そこで立ち上げメンバーや、初期からのアーティスト、芸能の方々などが講演をしました。その後18時ごろに山奥の稽古場(伝承館)へ移動し2回目の稽古が始まりました。

3日目以降はいよいよハードワークな稽古となってきました。連日5時間にわたる稽古で、2種類の踊りをマスターしながら歌を覚えたり道具の使い方を覚えたり、衣装を着てみたり、面を付けたりと様々な体験を一気に身体に詰め込みつつ、師範たちの言葉と情熱に背中を押され最後まで誰一人脱落することなく発表まで終えました。その様な濃密な日々の中でも、アクティビティとして(私は時には個人的に)三陸の様々な文化に触れることができるようJCDNのコーディネーターがいろいろな場所や人と繋げてくれそれがまた郷土芸能を習う意味を深めてくれたように思います。

 

 

そういった時間や、土地が持つ特異性に触れることでなぜ岩手また三陸にはこのように多くの芸能が独自に続いているのかと考えることができました。一つは昔から自然の脅威にさらされていたことが祈る行為へとつながったのではないかということ。また二つ目にこれは山形とも通じますが地形的に都市の文化が長年入りにくく、文化芸術やエンタメ的な物を自分たちで生産し消化してきた文化が続いている可能性を考えました。花巻の偉大な作家である宮沢賢治も言っていた 「一。小作人たれ ニ。農村劇をやれ」この言葉が三陸の芸能文化と繋がりました。話はそれますが、宮沢賢治と大石田町は間接的につながりがあり、昨年宮沢賢治を世に広めるきっかけになった松田甚次郎という人物の演劇を町で上演したのですが松田甚次郎の妻が大石田町(旧横山村)出身であるそうです。私自身その作品に振付として関わりそこから岩手の文化に興味が湧き始めたわけなのですが、今回で終わらずこれからも様々な角度で岩手を含んだ東北の文化を知っていきたいと思います。

最後に今回の企画を立ち上げたJCDNさん、受け入れてくださり「なおらい」でももてなしてくれた古水さん方、三陸フェスチーム、一緒に時間を過ごし意見を交わしたアーティストのみんな、そしてつなみ被害から復興し様々な不安を抱えながらもその土地で未来を作り続けている地域の方々に感謝申し上げてレポートの末尾とさせていただきます。

大橋武司