「Enjoy Dance Festival 2025 in 神戸―ダンスを楽しむ3日間」
リバイバル・リクリエーション/岩淵多喜子
出演者・選考ワークショップ参加者募集!

「Be」photo:塚田洋一

 

 

1999年にDance Theatre LUDENSを設立以来、全作品の演出・構成・振付を行い国内外の数々の賞を受賞した振付家・岩淵多喜子。代表作『Be』は、2003年~2008年にJCDN全国ダンス巡回プロジェクト「踊りに行くぜ!!」と、そのアジア版「踊りに行くぜ!! in アジア」だけでも計10地域で上演を重ね、各地で人気を博した男女のデュオ作品です。思わず自分と重ね合わせて感情移入してしまうユーモラスなシーンがちりばめられ、会話のような男女のコンタクトやソロひとつひとつが味わい深い名作。一方、『Against Newton』は、ニュートンの運動法則と人の一生を放物線に重ねて構成されフィジカルな見ごたえもある大作です。

今回Enjoy Dance Festival 2025では、リバイバル・リクリエーションとして、岩淵の代表作『Be』と『Against Newton』の2作(場合により、どちらか1作)を概ね40歳以下の振付家、ダンサーに振り付け、上演します。その出演者を公募します。

出演希望者には、7月に3会場で行う出演者・選考ワークショップを受けていただき、その中から出演者を決めます。その後ワークショップを重ね、2026年3月6~8日に開催するEnjoy Dance Festival 2025 in KOBEにて上演していただきます。

「Against Newton」photo:池上直哉

 

募集〆切

2025年7月10日(木)18:00

募集地域

全国

募集対象

ダンスの専門のトレーニング経験のある、概ね40歳以下のダンサー、振付家、またはそれを目指す方。日本在住者。

応募要項

Enjoy Dance Festival 2025 in 神戸-ダンスを楽しむ3日間
リバイバル・リクリエーション 岩淵多喜子作品
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『Be』は2001年、Dance Theatre LUDENSの設立と同時期に創作した、私にとって最も初期の、最も多く上演してきた作品です。初演から2009年の最後の上演まで、太田さん・大塚さんの二人のダンサーとともに、国内外を巡り、多くの観客と出会い、言葉では言い表せないような貴重な経験をさせてもらいました。この作品のテーマは「ひと」。人と人との関係性をどう描くかという問いに向き合い、動きと心理を結びつける方法を模索する中で、私自身の創作の「骨格」とも言えるものが育まれていったように思います。そうした意味でも『Be』は、私のその後の方向性を決定づけた特別な作品と言えます。 
『Against Newton』は2003年に初演。『Be』や『Distance』といった初期の作品群ではテーマや意味から動きや場面を立ち上げていましたが、この作品ではアプローチを変え、「重力」という物理法則をテーマに、身体の一部の落下や全身の落下、立つ、倒れるといった運動そのものに焦点を当てたアプローチを試みています。背景には、私が学生時代に専門で学んだ運動学の「ジャンプ動作の軌跡は踏切時の速さと投射角によって決まり、空中でどんな動作をしても身体重心の放物線の軌跡は変わらない」というニュートンの運動法則と、人の一生を放物線に重ねたイメージが作品の核になっています。

作品は動きや構成といったものだけでなく、ダンサー固有の身体性や雰囲気、そしてそれがかけ合わされた時に生まれる「何か」、化学反応のようなもの、、、そういったことが、強く作用するものだと思います。私の場合、作品はダンサーとの協働作業によりつくり上げていくので、このダンサーだから、この作品になった、というように、その固有のダンサーとの出会いがなければ作品は成立し得ていません。そのため、今回リクリエーションのお話を頂いたとき、最初は正直難しいのではないかと感じました。でも次第に、オリジナルを忠実に再現することはできなくても、新たに出会うダンサーと、今この時代の感覚を取り入れながら、新たに作品を立ち上げることは可能かもしれないと思うようになりました。そして、踊る人が変わってもなお、変わらずに立ち現れてくる何かがあるとしたら、それこそが作品の本質であり、その作品の「作品性」といえるものなのではないか―。そんな問いとともに、今回のリクリエーションに向き合っています。
 これは、単なる再演ではなく、今を生きる次世代のダンサーの身体と感性を通して、新たに作品を“再創造”していくプロセスだと感じています。このプロセスに共に挑み、新たな息吹を作品に与えてくれる方との出会い、そして新たに生まれる化学反応を心から楽しみにしています。

2025年6月 岩淵多喜子

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◆作品ノート
「Be」(初演:2001 所要時間20分)
 
自分自身であること
自分自身でありながら他者と存在すること
他者と存在しながら自分自身であり続けること

アンビバレントな感情、自信、コンプレックス、独立、依存、競争、協力、
諦めなどをキーワードとし「存在する」ということについて身体的、心理的側面から考察した作品

 

横浜ダンスコレクション ソロ×デュオコンペティション2001
横浜市文化振興財団賞、在日フランス大使館賞

ダイジェスト映像:「Be」https://youtu.be/VQrBoYJH9Cc

批評:
岩淵多喜子の「Be」は観客を圧倒した。過激なわけでも奇抜なわけでもない。特筆すべきは、これまでになかった舞踊言語、キネティック・ヴォキャブラリーに満ちていること。言葉にはしがたいけれど、しかし明瞭な意味を持っているのである。(三浦雅士/ダンスマガジン5月号2001)

 

「Against Newton」(初演:2003 所要時間 30分)
    
「まっすぐ立つ」というあたりまえの姿勢を維持するのにどれだけの外的、内的力を要するか。
普段私達は意識的、無意識的に重力の影響を受けている。
一度投げ出された物体が様々な放物線を描きながら落下していくように、私達も一度放り出されたらそれぞれの軌跡を描きながら落下へ向かっていく。
抗えない物理的な法則を受け入れながらもあきらめ切れない気持ち。
抗いながらも全ての人に平等に与えられている物理的法則に対する安堵。
重力に従って「もうこれくらいで」という気持ちと、重力に逆らって「まだまだこれから」という二つの相反するベクトルの中で揺らいでいる自分たちのポートレート

ダイジェスト映像:「Against Newton」https://www.youtube.com/watch?v=o4cNTLghlss

批評:ダンスの原点まさぐる試み
良くも悪くもスタイリッシュな目新しさが消費されがちな現代舞踊の世界で、岩淵は着実に自分の道を踏み固めている。身体の多様な動きをバラバラに解体し、それらを周到に再構築した作品には、身ひとつでダンスの原点をまさぐっているような、親密で真摯な手触りを感じる。
(石井達朗/朝日新聞2003年3月26日)

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【公演について】
◎公演日:2026年3月6日(金)・7日(土)・8日(日)のいずれか2日
 ※仕込み・リハーサル期間:3月3日(月)~5日(木)
◎会場:新開地アートひろば、または、ArtTheater dB KOBE
◎上演回数:2回

 

【選考ワークショップ】
下記の3か所で開催します。内容は同じですので、ご都合の良い会場・日程をお選びください。

■東京会場:7月17日(木)16:00―21:00
森下スタジオ・Bスタジオ(協力:公益財団法人セゾン文化財団)
東京都江東区森下3-5-6

■神戸会場:7月19日(土)11:00―17:00
ArtTheater dB KOBE(協力:NPO法人DANCE BOX)
神戸市長田区久保町6丁目1番1号 アスタくにづか4番館4階

■京都会場:7月20日(日)11:00―17:00
ウイングス京都・フィットネスルーム 
京都市中京区東洞院通六角下る御射山町262番地

*基本的に上記の時間帯を考えていますが、出演作品の希望状況によって、作品ごとに時間帯を分けるなどの変更があるかもしれません。
応募締め切り後に、各参加者に改めて時間帯をご連絡します。

 

【参加対象者】ダンスの専門のトレーニング経験のある、概ね40歳以下のダンサー、振付家、またはそれを目指す方
※ワークショップのみの参加も可能です。
◎参加費:2,000円
◎参加人数:各会場20名程度 

 

【募集人数】
「Be」男性ダンサー、女性ダンサー各1名
「Against Newton」3名(男女問わず)
*Againt Newtonのオリジナルは女性3名のトリオですが、リクリエイションにあたり、男性の応募も歓迎します。
*各作品、ダブルキャストになる可能性もあります。
*各作品の本番での上演回数は1-2回となります。

 

【出演作品希望】
下記から選んでください。
〇「Be」
〇「Against Newton」
〇「どちらでも」
〇「どちらとも」

 

【稽古日程に関して】
下記の期間の中で、トータル3週間程度を予定しています。選出された方の可能な日程なども鑑みて、最終的に決定します。稽古は基本的に京都市内を予定していますが、こちらも選出者の居住地のバランスなどを鑑みて最終調整していきます。
関西圏以外の方が選ばれた場合に、交通費補助(2往復分)+宿泊場所はJCDNが負担します。(補助額の最終決定は選出者決定後、リハーサルの期間、場所の調整をした後にお知らせします。)

下記はリハーサルの候補日程です。現段階の参加可能な期間を〇、△、✖でお知らせ下さい。
(この期間すべてにリハーサルが入る訳ではありません。調整して最終的にトータル3週間程度となる予定です。)
 
・2025年 ① 8/12-17
・2025年 ② 8/23-31
・2025年 ③ 9/1-7
・2025年 ④ 9/8-12
・2025年 ⑤ 9/16-21
・2025年 ⑥ 12/25-30
・2026年 ⑦ 2/10-18
・2026年 ⑧ 2/21―3/2

・2026年3月4日―8日(公演前リハ―サル、公演日)
※出演者のみでの稽古については、進捗状況に応じて協議します。
※本事業の一環として、稽古の公開を行う場合があります。

 

【選考について】
◎出演希望者は、応募の際に、自身の踊っている映像(Max 5分程度)をお送りください。参考資料として、振付作品の映像をお送りいただくこともできます。
◎選考は、上記ワークショップおよび映像を含む応募資料によって行います。
◎なお、応募締切の時点で出演希望者が多数の場合、ワークショップ実施前に応募資料による予備選考を行う場合があります。
◎ワークショップへご参加いただけるかどうかは〆切の数日後、ワークショップ後の選考結果は、7月末をめどにお知らせします。

 

【出演の条件】
◎ダンスの専門のトレーニング経験のある、概ね40歳以下のダンサー、振付家、またはそれを目指す方。日本在住者。

◎約3週間程度の稽古、および2026年3月4日―8日のEnjoy Dance Festival2023のリハーサル・上演に参加できる方。

◎出演料・日当として薄謝をお支払いします。

◎公演に向けたスタッフメンバーとして、振付アシスタントが稽古に参加する場合があります。振付アシスタントの募集は行いませんが、応募者で振付アシスタントに興味がある方は、応募フォームの「その他」欄にその旨をご記入ください。

 

【応募方法】
下記のフォームよりお申し込みください。※フォーム入力にはGoogleアカウントの取得が必要です。
https://forms.gle/7DqDHkXocfrcAQ8z6

〆切:2025年7月10日(木)18:00

【問合】 
Enjoy Dance Festival担当窓口(NPO法人JCDN内)
メール:enjoydancefes@gmail.com

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【プロフィール】 

岩淵多喜子 / Takiko Iwabuchi

ラバンセンター(ロンドン)にてコンテンポラリーダンスを学び、ダンサーとしてエルヴェ・ロブ、テッド・ストッファーなどの作品に参加。1999年帰国、 Dance Theatre LUDENS設立。以後、LUDENSの全作品の演出・構成・振付を行い、創作過程を重視したプロジェクト単位の活動を行う。“LUDENS” は、ヨハン・ホイジンガの著書 「ホモ・ルーデンス」 に由来、Playful People − 遊戯人 を意味する。代表作として、人の関わりに視点をあてた 「Be」「Es」「Distance」、身体と重力をテーマに 「Against Newton」「Against Newton II」、時をテーマに 「Moments」「Anonym」「1hour before Sunset」 などを発表。国内の他、ImpulsTanz(オーストリア)、ADF(アメリカ) をはじめとした世界9か国の主要なフェスティバルより招聘を受け作品を上演、各地で高い評価を得る。また、創作活動の他、海外の振付家との共同製作や東京国際ダンスワークショップReActonをはじめとした人材育成事業、学校でのアウトリーチ活動等、様々な形でコンテンポラリーダンスの普及・育成に携わる。
「Be」 にて 横浜ソロ×デュオコンペティション【横浜市文化振興財団賞】、【在日フランス大使館賞】、「Distance」 にて 【舞踊批評家協会新人賞】 受賞。2000年DanceWebスカラシップ(オーストリア)、2001年ACC(アジアンカルチュラルカウンシル)スカラシップ、2000年~2005年公益財団法人セゾン文化財団より芸術創造活動助成を受ける。現在、日本女子体育大学運動科学科ダンス学科准教授として後進の指導に当たっている。

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リバイバル・リクリエーションについて

2000年から2010年にかけて、日本のコンテンポラリーダンスには数々の名作が生まれ、「踊りに行くぜ!!」を通して全国で再演を重ねた作品が存在します。しかし20年を経た今、そうした振付家の作品は、ほとんど観る機会がなく映像も公開されていません。あの名作をもう一度生で観たいという観客も多いはず。
そこで、このフェスティバルでは、2000年代以降の名作を現在の若手振付家・ダンサーに振り付ける、リバイバル・リクリエーション上演を試みます。
10~20代の振付家・ダンサーにとっては、時代を切り拓いてきた振付家の創作現場を共にすること、観客として生の上演を観ることで、それぞれのアーティストの思考や哲学を含む振付を知り、学びにつながることでしょう。

 

Enjoy Dance Festival について

「Enjoy Dance Festival(えんだんふぇす)」は、自身の活動拠点から活動の幅を広げたいと考えている若手振付家のための上演と交流の場です。参加振付家の皆さんには、リハーサルを含む6日間を通して、世代を超えて、振付家、ダンサー、観客、スタッフとの交流やトークの場を持ち、お互いの作品を鑑賞し、フィードバックを得る機会をたくさん設けます。また、経験豊富で相談しやすいテクニカルスタッフが公演に参加するほか、振付家のためのセミナー、交流会なども予定しています。